第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「そーいやお前、なんで信玄様とここに来たんだよ?」
「それはね……あ!」
幸村の疑問に答えようとした、その瞬間。
幸村の肩越しに見た星空に、一筋の光が流れた。
でもそれは、あっという間に消えてしまって…
幸村に教える暇もなかった。
私だけがそれを発見してしまった事に、思わず落胆のため息をつく。
「あー、流れ星……!」
「……流れ星がなんだよ」
「信玄様に教えてもらったの、流れ星にまつわる素敵なお話」
信玄様が教えてくれたのは。
昔、恋仲同士の男女がいて、戦に行かなければならなかった男が、女を逢瀬に誘って…
この河原で一緒に夜空を見上げ、その時一緒に流れ星を見た。
そして、二人は流れ星に約束をしたんだって。
『今は織姫と彦星のように離れているけれど、俺は必ず生きて帰ってくる。またこうして一緒に夜空を見よう、そして…その時に大事な話をさせてくれ』
その後、無事に武功を立てて帰ってきた男は、星空の下で女に求婚し、二人は一緒になって幸せに暮らした。
それ以来……
この河原で一緒に流れ星を見ると、二人の愛は深まり、また戦勝祈願にもなるんだとか。
(素敵なお話だよね、今の私達にぴったり)
幸村には無事に帰ってきてほしい。
そして…私達もまた関係が深くなるといいな。
そんな風に思って、ここへ来たんだと。
幸村にそう話したら…
幸村は何だか照れたような拗ねたような顔になり、私から身を起こすと、隣に一緒に横になった。
「なら、尚のこと俺を誘えっつーの。何があったかと思ったじゃねーか」
「ご、ごめん。気にしてくれたんだね」
「気にはしてねー、でも…少し腹立った」
(……それが気にしてるって言うんだけどな)
さっきは素直に言ってくれたのに、今はいつもの幸村だ。
でも流れ星なんて、頻繁にあるもんじゃない。
さっき見られただけで満足かなぁ。
もしかしたら、星空に願うだけでも違うかも。
私はそう思い、胸の前で手を合わせる。
満天に煌めく星達、私達を見守ってください。
どうか、幸村が大きな怪我をしないで、帰ってこられますように。
そう願っていると…
急に黙った私の顔を、幸村が覗き込んできた。