第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「……っ」
その時、静かに話を聞いていた幸村の瞳が、微かに揺れた。
まるで頭上に瞬く星のように、輝いて。
そして、くしゃっと表情が歪められた、次の瞬間。
「────…………!」
私は柔らかな草むらに背中を付いていた。
見上げれば、満天の星々と……
顔を真っ赤にした幸村が、こちらを見下ろしているのが解った。
「ばーか、謝るのは俺の方だろ」
「幸村……」
「無神経な事言って…ごめん」
「……っ、そんな事ないよ!」
「いーや、お前のそういう気持ちに気づけなかった自分に、すげー腹立つ。それに……」
ゆっくり顔が近づいてきて、鼻先をちゅっと啄まれる。
そして、幸村は私の頬を撫でながら…
何だか少しだけ泣きそうな、そんな顔をしていて。
そのままゆっくりと、気持ちが紡がれた。
「お前が誕生日を楽しみにしててくれたの、知ってた。俺だって、出来れば一緒に祝いたかった」
「幸村……」
「でも、俺はお前が居ればいつも特別なんだよ。誕生日でも、そうじゃない日でも。俺だって…お前とは運命だって、そう思ってる」
「……っ」
直球にぶつけてくる言葉達。
普段素直に言わない幸村の──……
赤裸々で真摯な想いのカタチ。
「美依、愛してる。生まれてきてくれて、感謝してるとか…ありがとな。その言葉だけで、十分に祝ってもらえてる。日にちにこだわらなくても…今年の誕生日はすげー幸せだ」
(私、馬鹿だ……)
私だって、幸村と居れば毎日が特別なのに。
毎日が、すごくすごく幸せなのに…
何を形式にこだわっていたのだろう。
もちろん、その日は大切だけれど──……
お互いが『幸せ』って思える。
その瞬間が、何よりも大切なんだ。
「幸村…ありがとう」
「ありがとうも、俺の言葉だろ」
「うん、でも…ありがとう」
「ん、解ったんならいい」
今度は二人で顔を見合わせ、笑い合う。
こうして、笑顔を交わす瞬間も"幸せ"だ。
そんな瞬間瞬間の幸せの積み重ねが…
きっと、私達にとって"特別"になるんだ。
貴方は明日、戦に行く。
それは辛いけど───……
私達は、もっと幸せを積み重ねていけるって。
単純にそう思うんだ。