第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「頭撫でられただけか、あと何もされてねーな?」
「さ、されてないよ!」
「んなもん、知ってる」
「もうっ……」
(もしかして、これは"消毒"のつもり?)
大きな手で半ば乱暴に頭を撫でられながら、思わず苦笑が漏れてしまう。
でもそれは幸村も同じのようで。
そんな風にしながら、幸村はいつの間にか困ったように笑っていた。
私達、いつもケンカしてばかりだけど…
単純な事で、すぐに仲直りしたりするんだよね。
それでも、信玄様には感謝しなきゃいけないし、幸村にもちゃんと謝らなきゃいけないけれど。
私はぴったりと幸村に寄り添い…
間近で顔を見つめ、素直に自分の気持ちを言葉にした。
「幸村、二つごめんね?」
「なんだよ、二つって」
「勝手に宴を信玄様と抜け出した事と…昨日の事」
「……」
「私ね、自分が甘いってすごく思うんだ」
幸村の瞳をじっと見つめる。
意志の強そうな、赤褐色の瞳。
平和を願い、自分の信念を掲げる…
そんな強い貴方と、これからも生きる為に。
私は私の甘さを曝け出すよ。
受け止めてなんて言わない、ただ知って欲しい。
────私は貴方を大切に思ってる事
「戦があって、誕生日なんて…祝えないのは解ってる。この乱世では戦いが日常にあって、そんな甘ったれた事は言ってられない状況なのも」
「美依…」
「それでも、幸村が生まれた大切な日だから。私の大切な人の大切な日だから…どうしても寂しいと思ってしまうの。その日をお祝い出来ない事が、悲しくて」
「……」
(わがままでごめん、自分本位でごめん)
私は現代に生きていたから、やはり平和ボケしてるのかもしれないな。
誰も傷ついてほしくない、死んでほしくない。
それが無理だと解っていても…
それを望んでしまう、私の甘さ。
でも、囁かな幸せを大事にしたい。
幸村がほっとひと息つけるような…
そんな存在で在りたいと、いつも思っているんだよ。
貴方は私の大好きな人。
唯一でたった一人の……
運命で結ばれた相手だと思っているから。
「私は幸村がこの世に生まれてきてくれて、本当に感謝しているから。ただ歳を取るだけの日でも…私は大切にしたい。ごめん、甘い人間で…本当はもっと賢く強い人間になりたいのに、ごめん…」