第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「……信玄様?」
「ん?どうした、姫?」
「えぇーと、幸村を呼びに行ってくれるんですよね?」
「いやぁ、君と逢瀬出来て最高だなー」
「えぇっ?!」
驚く私とは裏腹、信玄様は相変わらずの余裕な笑みを浮かべている。
てっきり、幸村と仲直りのきっかけを作ってくれたのだとばかり思っていたけど…
私は単に、逢瀬に誘われただけなんだろうか。
思わず信玄様を疑いの目で見つめてしまうと。
信玄様はぷっと吹き出し、さっき宴でしたように、また私の頭を優しく撫でてきた。
「幸ならそろそろ来るんじゃないか?」
「え?」
「ずっと俺達が話してる所を見てたからな」
幸村が、私と信玄様を見ていた?
その言葉に思わず、顔が火照る。
幸村も気にしてくれていたのかな…と。
そんな風に若干自惚れた、その時だった。
「信・玄・様!近いっての!」
(────えっ?)
突然頭の上からした、不機嫌そうな言葉。
次の瞬間、私は信玄様から引き離され…
後ろから、誰かに抱き締められていた。
振り向かなくたって解る。
この声や、温かな温もり、匂い。
それは私の大好きな人だった。
「幸村……っ!」
「なに二人でこそこそ抜け出してんだよ、ふざけんな」
「幸〜、やきもちか?」
「……っ違います!」
視線を後ろに向ければ、案の定。
少しだけ照れているような、不機嫌そうな幸村の顔が目と鼻の先にあった。
私達を追いかけてきてくれたの?
しかも…どう見たってやきもちだよね、これ。
それを感じて、私まで顔が赤くなる。
すると、そんな私達を見ていた信玄様は、その場から立ち上がり、色っぽく片目を瞑ってみせた。
「やれやれ、俺は退散するとしようか。後は若い二人に任せる、まぁ仲良くやりなさい」
「…っ、信玄様ありがとうございます」
「天女の憂い顔は見ていて心苦しいからな。幸に愛想が尽きたら俺の所に来なさい、歓迎するよ」
何とも言えない大人の色気を醸し出しながら、信玄様は来た道を戻っていった。
あんな風に冗談言ってるけど…
私達の事を、本当に心配してくれたんだよね。
幸村は一度私を離し、改めて隣に座り込む。
そして何だか怒っているような顔つきで、私の頭をわしわしと撫でた。