第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「いたっ……」
「何、辛気臭せー顔してんだ」
「だって……」
「仕方ねぇだろ、戦になっちまったもんは」
「そりゃそうだけど…やっぱり不安だよ」
(だって命を掛けるんだもん、戦は)
怪我をするだけじゃ済まないかもしれない。
何が起こるか…そんなの誰にも解らない。
幸村を信じていない訳ではないけど…
それでも漠然とした不安が、心の中をモヤのように覆う。
すると、そんな気持ちを察したのか、幸村は私をそっと引き寄せ抱き締めた。
少し高めの体温を感じ、その温もりが尊くて、思わずじわりと涙が滲んでしまうと…
幸村は私をあやすように背中を優しく撫でながら、相変わらずの自信に溢れた口調で言った。
「俺を信じて、待ってろ。ちゃっちゃと終わらせて、すぐに帰ってくるから」
「うん…でも」
「なんだよ」
「一日では帰って来れないから…」
「……誕生日の事、気にしてんのか?」
「うん……」
自分勝手だと思われたかな、でも。
幸村と恋仲になって、初めて迎える誕生日だった。
だから傍で、一番にお祝いしたかった。
仕方ないと解っていても、その気持ちも拭えない。
不安もある、でも残念な気持ちもあって。
どうしてこんなタイミング悪く…と思ってしまうのだ。
すると、幸村は大袈裟に溜息をつき…
少し呆れたような顔つきになった。
「誕生日なんていつでも祝えるだろ、当日じゃなくたって」
「そりゃ、そうだけど…」
「たった一つ歳を取るだけの日だ」
「…っ、そんな言い方しなくたって!」
幸村の言い方に、私は思わずムッとなって声を荒らげる。
確かに歳を取るだけの日だけど…
私の大切な人が生まれた日だから。
その日を大事にしたい、それだけ。
(すごくわがままだって解ってるよ)
謀反相手を鎮圧する。
幸村に取っては戦は日常で、それをしなければならない…今は乱世という事も重々承知している。
それでも。
私は囁かな幸せを大事にしたい。
大事な記念日を、大切に過ごしたい。
その二つを天秤に掛けるなんてバカみたいって解っているけれど…
私は幸村にとっても『大切』に思ってほしいと…そう願ってしまう。