第31章 〖誕生記念〗煌めく一番星に想いの華を / 真田幸村
「えっ…幸村が戦に……?!」
晴れた日の春日山城。
佐助君から聞いたその情報に、私は思わず目を見開き、驚いた声を上げた。
私が春日山城に来て、少し経つ。
信玄様、謙信様、そして信長様…この三人の間で同盟が結ばれ、争う事は無くなって。
だから、私はもう戦なんてものは無縁だと思っていた。
今だって、幸村の故郷に一緒に帰るために、その準備をしていた所だったんだから。
だから、佐助君の話を聞いてびっくりしている。
『幸村が戦に行く』なんて…
どうしていきなり、そんな事になったんだろう。
「謙信様傘下の国で、謀反があったらしい。詳細は省くけど…ちょっと鎮圧するのに難ありなんだ。相手が挙兵してる以上、こっちもそれなりに準備していかないといけない」
「それで、幸村が…?」
「幸村を将として、赤備えを率いる。幸村が負ける事は有り得ないけど…それでも戦には間違いないから、君にも知らせておいた」
「いつ出発するの?」
「明後日だ」
「明後日……?!」
(嘘、明後日って言ったら……)
七月七日。
それは私の大好きな幸村の誕生日だ。
一緒にお祝いしようねって前から約束していたのに…
幸村は、戦に行くんだ。
心がずっしりと重くなる。
幸村に限って、帰って来ないなんて事は無いと解っているし、負けるはずがないと確信はしてるけど。
それでも、大切な大切な誕生日。
そんな日に戦に行く事になるなんて。
思わず落胆を隠せずに居ると…
部屋の襖が開き、今まさに話をしていた話題の本人、幸村が姿を現した。
「美依…佐助も居たのかよ」
「幸村、君が忙しそうだったから…代わりに美依さんに戦の事を伝えておいた」
「そっか、ありがとな」
佐助君が幸村と入れ替わりで部屋を出ていき、私は幸村と向かい合う。
それでも、まともに顔が見れなくて、俯いてしまっていれば…
幸村は私の頬に手を当て、やんわり上を向かせた。
その鮮やかな瞳は優しく細められていて…
私が不安そうに見つめれば、その頬に当てた手を離され、今度は鼻先を指でピンッと弾かれた。