第30章 〖誕生記念〗恋々路に降る星屑と煌 / 織田信長
「泣きながら笑うとは…全く貴様は」
「嬉し涙なんですっ」
「そこが愛らしいと言っている」
「わっ……」
ふわりと抱き締められ、また幸せに満ちる。
二人で顔を見合わせ…
そして笑い合えば、それは弾けて瞬いた。
そう、星が降った夜空のように。
想いが通じた奇跡は、極彩色に煌めく。
「もっと…貴様を愛したい」
「……っはい、私も愛されたい」
「存分に堪能させろ…愛している」
「んっ…ぁ……っ」
そうして───………
信長様の誕生日は、瞬きながら鮮やかに過ぎていった。
好きな人と愛し合えるって、本当にどのくらいの奇跡なんだろう。
でもね、思うんだ。
きっとそれは『必然』だったと。
貴方を本能寺で助けた瞬間から…
きっとこの恋は始まっていたのだから。
信長様、愛しています。
これからもお傍に居させてくださいね?
私は信長様の熱に溺れながら──……
ひたすらにこれからの幸せな未来に思いを馳せた。
*****
(……いつの間にか、朝か)
その日の目覚めは穏やかだった。
そして、こんなに深く眠ったのは何時ぶりか…と思い、少し驚いた自分も居た。
腕の中には穏やかに寝息を立てる美依。
一糸纏わぬその姿、白い肌にはいくつも赤い花が咲き…
それは己が情欲に駆られた証だ。
このように、一人の女に執着したのは初めてで。
それもまた一興か…と思うには少しばかり違和感を覚える。
金平糖のように甘い感情に、何故か…
酷く満たされるような、そんな気がした。
「美依……」
「んっ…んぅー…」
「くすっ…随分とぐっすりだな。眠り姫」
その細い髪を指で梳く。
髪がゆるりと絡まる感触にも愛しさを覚え…
改めて掻き抱いて、その額に唇を押し当てた。
思えば…
美依を焦がれるようになって、なかなかその想いを口に出すことが出来ず。
美依に悪戯に触れたり…しか出来なかった己が。
半ば強引に逢瀬に誘ったのは、不意に書庫で見つけた『とんでもない巻物』がきっかけなのだが。
周りは皆、焦れったく思っていたのか。
まぁ、美依が自分を恋焦がれる目で見ていたのは知っていたけれど。