第30章 〖誕生記念〗恋々路に降る星屑と煌 / 織田信長
「黒瑪瑙は成功の象徴とも言われてるそうです。信長様には天下統一って望みがあるから…これにしてみました」
「……」
「首飾りなら甲冑の下にも付けられるかなって。いくら私が幸運のお守りって言われても、戦場真っ只中には付いて行けないから…これが信長様を守ってくれるように」
『奇跡』よ、起これ…と願う。
無慈悲に見えても、本当は温かく優しい貴方。
時に無邪気な子供みたいで。
時に私を翻弄する、大人の男の人。
どうか、貴方の傍に居させてください。
好きです、
貴方のことが、大好きです──……
「私、信長様の事が大好きです。貴方と恋仲になりたい。今日一緒に過ごせたように…これからもずっと、来年の誕生日も一緒に居たいです。信長様、お誕生日おめでとうございます。愛していますよ」
私が想いを伝えれば…
信長様は目を大きく開いて私を見た。
でも、すぐにふっと目元を緩め。
私の額に自分の額を付けて、目を覗き込んでくる。
「"浪漫的趣旨"の逢瀬は成功、だな」
「え?」
「いや、此方の話だ……美依」
「……!」
すると、信長様は軽く私の唇を啄んだ。
ちゅっと小さな音を立てて離れれば、一気に血液が顔に回って火照ってきて。
そんな私を見ながら……
信長様は穏やかな口調で言葉を紡いだ。
「俺も愛している、美依」
「えっ……」
「貴様はただの験担ぎではない。その愛らしい姿を見る度に、ずっと俺のものにしたいと思っていた。ずっと…貴様が欲しかった」
「……っ!」
その言葉に見つめ返せば、熱を帯びた紅玉の瞳がそこにある。
キラキラキラ。
まるでこの夜空見たいに煌めいて。
その鮮やかな赤に、私の顔も映って……
ああ、『奇跡』は起こったのだと。
ストンと心の中に感情が落ちてきて、次第に涙の膜が張ったのが解った。
「泣くな、泣き虫め。降る星が見えなくなるぞ」
「もう、はなから見えてませんっ…!」
「そうなのか?」
「もう、信長様しか見えなくなってますっ…」
私が素直にそう答えれば、信長様は一瞬面食らったような顔をして…
私を抱き締めると、そのまま体勢を変えた。
私の背中は花畑についていて…
信長様が覆い被さるようにして、私を見つめてきた。