第30章 〖誕生記念〗恋々路に降る星屑と煌 / 織田信長
「ほう…貴様は温かいな」
「の、信長様っ…!」
「暫し待て、多分もうすぐだ」
「もうすぐって何が…?」
私がびっくりしながらも首を傾げれば、信長様は人差し指を上に向けて、空を指差す。
釣られて、私が空を見上げれば…
そのタイミングで、すーっと。
濃紺の夜空に、光が流れたのが解った。
「あ、流れ星!」
「始まったか」
信長様が嬉しそうに呟く。
次の刹那。
視線の先の光景に、私は目を瞠った。
「───………!!」
キラキラ……
キラキラキラ……
星達が輝きながら、次々に光の筋を作り始める。
まるで夜空いっぱいに広がり散るように…
星が無数に瞬いて、長い光の尾を作りながら流れていって。
『星が降っている』のかもしれない。
本当にそう思わせるような……
何とも幻想的な光景に、私は思わず息を飲んだ。
「すごい、流星群だ……!」
「ほう…貴様、星が降る現象を知っているのか」
「私の時代にも時折あったんです。でも、こんな風にはっきり綺麗に見えたのは初めてです…!」
「……そうか」
信長様も私の腰をしっかり引き寄せ、その夜空を目に映す。
まさか、この時代で流星群が見れるとは。
しかも好きな人の誕生日、その人と一緒に。
こんな風に抱き締められて……
(私、今なら気持ちを伝えられるんじゃない?)
高ぶった心が、勇気に火を点ける。
その落ちてくるような星達。
この瞬間はきっと『奇跡』なんだ。
私がこの時代に来て、信長様に恋したのも『奇跡』
その奇跡の連鎖があるのなら…
きっと『もう一つの奇跡』も起こるんじゃないかと。
それは───………
気持ちが通じ合うっていう『奇跡』
「信長様……」
「なんだ」
「あの、これっ……!」
私は懐に手を入れると、小さな紙の包みを取り出し、それを信長様に差し出した。
信長様は少し首を傾げたけれど…
それを受け取って、ゆっくり紙包みを開き。
そして、中身を確認した途端、信長様は微かに紅い瞳を揺らした。
「首飾り…?」
「はい、麻の紐を編んで作りました。一緒に結んである石は…黒瑪瑙って石で。お誕生日の贈り物です」
私は信長様をしっかり見つめ…
そして、自分の心の声に素直になる。