第30章 〖誕生記念〗恋々路に降る星屑と煌 / 織田信長
────信長様は私をどう思ってる?
私は本能寺で信長様を助けた。
それからは幸運を呼ぶお守りとして、信長様は傍に置いてくれているけど。
やっぱりそれだけなのかな。
信長様の『気に入った』はどの程度?
気持ちが解らない、さっぱり掴めない。
私は……恋仲になりたいんだけどな。
思わず額に手の甲を当てる。
顔が火照っているから、熱くて仕方なかった。
そして、あのふわりと落ちた温もりは……
考えれば考えるほど『答え』は見えてしまって。
またさらに恥ずかしくなって、私は顔を赤くしたまま俯いたのだった。
*****
「見事に晴れましたね〜!」
「そうだな、遠乗りには丁度いい」
五月十二日。
その日は、見事な晴天だった。
空は高く青々と澄み渡っていて……
そんな中、私と信長様は一つの馬に一緒に乗り、草原をゆっくりと走っていた。
信長様は前に私を座らせ、後ろから抱え込むようにして手網を握る。
いつもより距離が近くて、ドキドキしてしまうけど…
それでも初めての二人きりでの逢瀬。
心が弾まない訳がなく、私は朝からずっと上機嫌だ。
(誕生日の贈り物も間に合ったしね)
今日は信長様の誕生日だから。
今日に間に合うように、誕生日プレゼントもしっかり用意した。
信長様が喜んでくださるといいな。
そう思ってにこにこしていると……
信長様の口元が弧を描いたのが解った。
「貴様、随分上機嫌だな」
「え、あ、まぁ…そう、です」
「俺との逢瀬がそんなに嬉しいか」
「は、はい……」
素直に答えれば、信長様はくくっと可笑しそうに笑う。
ちょっと顔を上げれば、先を見つめる赤い瞳が、優しい眼差しになっているのが解って……
その穏やかな表情に、ドキッと心臓が跳ねた。
こんな優しい顔を見せてくれるんだな。
それって、なんか特別っぽくて…妙に嬉しい。
そう思えば、少しだけ心が近づいたような。
そんな気までして、また気持ちがふわふわした。
(この逢瀬で…もっと近づけるかな)
欲張りにも、それを期待してしまう。
もっと信長様の『特別』になれたら、なんて。
淡い希望を抱いてしまって、止まらない。