第29章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【後編】/ 徳川家康
「私達、あの日からやり直そうって言ったでしょ?だから…これ着てきた、懐かしいでしょ」
「美依、政宗さんとは……」
「うん、話つけてきたよ」
美依はこちらに歩み寄り、にこっと笑った。
そのまま話を聞いてみれば……
政宗さんはあっさり美依を手放したと言う。
あんな風に激怒したのだから、よっぽど美依が好きだったに違いないのに。
それでも、美依の幸せを願ったのか。
あの人には…感謝しなければいけないな。
(ありがとう……政宗さん)
「美依」
「家康……」
「あの日をやり直すから、よく聞いて」
俺は美依の頬に両手を添えた。
そして、瞳を覗き込みながら、あの日伝えられなかった言葉を……
時を越えて、今伝える。
「俺は美依が好きだ、だからあんたが欲しい。あんたの初めての男になりたい…経験ないなら、俺がその一人目になりたい」
「家康……」
「誕生日プレゼントはあんたがいい。あんた以外何も要らない…だから、俺と付き合って。これからも、一緒にいたい」
「……っ」
次第に、美依の瞳が潤んでいく。
黒真珠の瞳に涙の膜が張って……
でも、その視界には俺しか映っていない。
答えて、美依。
これが、俺があの日伝えたかった言葉だよ。
ずっと心に想っていたから。
あんたを、美依だけを……
────寒い季節に、
あんたを温めるのは、俺でありたい
「家康……」
「うん」
「私も家康が好きだから…あげるよ」
「美依……」
「私をあげる、ハッピーバースデー…家康」
────もう……堪らない
「わっ……!」
その小さな身体を掻き抱けば、温かな熱が伝わった。
ずっとずっと欲しかった。
あんたが欲しかったよ、美依。
もう、我慢なんて出来ない。
いつかあんたを奪ったみたいに……
また、同じ熱を分け合いたい。
ようやく、運命は重なる。
気持ちが一つに溶け合って……
あんたに、堂々と触れられる。