第3章 〖誕生記念〗揺れる桔梗と初染秋桜《後編》/ 明智光秀
────愛しすぎて、息すら出来ない
こうして抱き合える悦びに
初めてを捧げてくれた、お前に
俺はなんて言葉を返せばいいんだろうな?
今は何も思いつかないから
ただ、お前を抱き締めさせろ
俺がお前をずっと守る
お前が光だけを見つめていられるように
この手で、必ず──……
「はぁっぁあっ…みつ、ひで、さんっ……!」
「んっ…美依、もう、いいか……?」
「はいっ…私も、だめぇっ、ぁあっ……!」
「美依っ…出るぞ、美依っ………!!」
びゅくっ!どぴゅっ…………!!
ああ…お前を俺で汚してしまったな?
せっかく、真っ白なお前だったのに。
秋に揺れる秋桜が如く、薄紅に染まった。
だが、その方が綺麗だぞ?
もう……俺色になったからな、お前は。
二人で力尽きて、抱き合って……
目を閉じたら、なんだか幸せな夢を見ていた。
俺とお前と、手を繋いで。
太陽の下を歩き、笑いあって。
『光秀さん、大好き』
そう、極上の台詞を囁かれるような。
そんな、馬鹿みたいに甘ったるい夢だった。
もう少し、そこに微睡んでいたいと……
俺を引き止めて、離さないような、そんな微温湯だった。
*****
(ん……?)
少し冷たい夜風が、火照った素肌を撫でる。
小さくくしゃみをしたような音が聞こえ……
俺はゆっくり、意識を浮上させた。
見れば、腕の中の美依が小さく縮こまって、俺の胸にくっついている。
美依のくしゃみだったのか、寒いのか?
そう思い、俺は毛布を肩まで引っ張りあげた。
まだ部屋は真っ暗、どうやらまだ夜は明けてないらしい。
なら…まだ一緒にいられるな。
そんな甘酸っぱい感情が、心を締め付けた。
「まだ、身体は温かいな……」
美依の背中を撫でながら、口元が緩む。
穏やかな寝顔は、いつもの美依で、純な姿そのままだ。
(お前の初めて、俺で良かったのか?)
今さらどうしようもならない疑問まで、浮かぶけれど……
もう仕方ない、奪ってしまったからな。
美依の温かい身体を堪能しながら、くすりと小さく苦笑が漏れた。