第29章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【後編】/ 徳川家康
「────なら、俺がハッキリさせてやろうか?!」
その瞬間だった。
政宗さんが、業を煮やしたように吠え。
俺の胸ぐらを掴むと、そのままベッドに俺の身体を押し付けた。
そして、俺に馬乗りになり……
俺を上から見下ろしながら睨んでくる。
「……っ政宗!」
「お前は黙ってろ、美依」
「……っ」
「家康、お前がうじうじ煮えきらねぇから、こうなってんだって自覚しろ」
「政宗さ……」
「ハッキリ言っちまえよ、なぁ!」
すると、政宗さんは手で俺の顎を掴み……
ベッドの横にいる美依の方に顔を向けさせ、まるで俺の心を代弁するように言った。
「────美依が好きなんだろ?!」
「………!」
それは言ってはいけない気持ち。
『あの日』の事を無かった事にしようと、美依に言われた時から……
どんなに想っても、
どんなに焦がれても、
身体を繋げたところで、
心までは繋がれなかったのだと。
(それが言えたら……どんなに)
びっくりするような美依の顔。
そんな訳ないって…そんな顔。
それこそ、今蒸し返したって。
俺には彼女がいて、
美依には政宗さんがいて、
『俺達』の関係なんて──……
そんなものは、有りはしないのに。
「そうなんだろ、家康?!」
「ち、違う……!」
「家康!!」
「俺は、美依なんか……」
「……っじゃあ、あの日は何だったんだよ!」
────バキィッ!!
瞬間。
頬に衝撃が走り、目から星が散った。
あ、殴られた。
そう思うや否や、ベッドサイドから美依の悲鳴が上がる。
それでもなお胸ぐらを掴まれ……
政宗さんは俺を青い目で睨みつけながら、ふんっと鼻で笑った。
「一月の寒い日だったな、お前らが教室でヤッてたのは」
「……っ」
「俺は美依を探しに来て、偶然それを見て…ああ、こいつら付き合ってんのかって。だが、話に聞きゃ、お前ら付き合ってる訳でもなんでもねぇって…その時の俺の心境が解るか」
政宗さんは俺を視線で射抜く。
真っ青に爛々と輝く瞳は……
どこか影っていて、まるで傷ついているかのように見えた。