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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第28章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【中編】/ 徳川家康






「あ、雪……?」





────飲み会から数日後

いつものように働く動物病院。
俺は窓の外を見て、俺は思わず目を見開いた。

鉛色の空から、粉雪が降り始めていたからだ。

ここのとこ、数日はとても冷え込んだ。
だから、雪が降るのも当たり前かもしれない。




(ちょうど患者も切れたし、今日はもう閉めるか)




今日はいつもより来院者が少なく、予約患者も丁度終わった所だった。

雪が深くなる前に、病院を閉めるかな。
そんな風に思っていると……
紗奈が診察室にゆっくりした足取りで入ってきた。




「家康先生…先生にお客様です」

「客?」

「はい……」




よく見れば、紗奈の表情がやたらと暗い。
それは気になったが、俺に客が来たのならば、そっちの対応が先か。

俺は紗奈の様子が気になりつつも、診察室から待合室へと出てみれば……

待合室に一人。
ちょこんと俯いて座る人影があった。




(え………?!)




その人影の正体を確認するや否や、俺は慌ててその人物に駆け寄る。

その人物は俺をゆっくり見上げ……
少し寂しげな顔で、にっこり笑った。




「家康、ごめんね…お仕事中に」

「美依…どうしたの?よくここが解ったね」

「あ…政宗に聞いたんだ。受付の子が従兄妹なんだって?」

「あ…そう言うことか」




(なんだ、美依…なんか)

なんだか美依も様子が変だ。
いつもみたいな、腑抜けたふにゃふにゃ笑顔じゃない。

なんか、思い詰めているような……
少し悲しいような、厳しい顔付き。
それに俺をわざわざ訪ねてくるなんて、何かあったのだろうか?




「家康先生、準備中の札…下げときました」




すると、いつの間に来たのか、紗奈がやっぱり暗い表情をしながら、俺の隣に来て話しかけてきた。

そして、美依に一礼し……
口元に微かに笑みを浮かべて言う。




「こんな天気じゃ、もう誰も来ないでしょうから…閉めちゃいましょう」

「あ、そうだね。ありがとう」

「私はもう帰りますので、ゆっくりお話を」

「いや、待ってれば送ってくから」

「大丈夫ですよ、バスで帰れますから…それじゃお疲れ様でした」




紗奈は気を遣わせまいとしたのか。
そのまま待合室を急ぎ足で出ていく。







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