第28章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【中編】/ 徳川家康
「美依の彼氏って政宗さん?」
「まぁな。お前くらいだぞ、知らないの」
「…ってか、どうやってうちの住所知ったんですか」
「紗奈に聞いた」
「は?」
「紗奈は俺の従兄妹だからな。昨日お前が美依を連れて帰ったってお前らの幹事から聞いて、速攻で紗奈に住所聞いた。お前ら付き合ってんの知ってたからな」
(……意外なとこで繋がってたのか)
政宗さんの話を聞いて、ガックリうなだれてしまう。
つまり、昨夜美依を部屋に入れた事は、紗奈にも伝わってしまっているのだろう。
そう思えば、紗奈に申し訳ない気持ちになった。
彼女を部屋に呼ばないで、大学時代の同級生(女)を泊まらせたなんて…俺ははっきり言って酷い奴だ。
「とにかく、美依は連れて帰るぞ」
「あ、ちょっと……!」
その時、政宗さんが無遠慮に家に上がり込んだ。
そして、まるで部屋の配置を知ってるかのように、寝室に行こうとするので……
俺は急いで後を追い、思わず後ろから引き止める。
俺に腕を引かれ、政宗さんは怪訝な顔をして振り返った。
今は美依は着替えているんだぞ?
何か変な風に勘ぐられたら……!
俺は焦っているのを悟られないように、冷静を装って政宗さんに話し掛けた。
「とりあえず、リビングに。お茶出しますから」
「なんだぁ、家康?お前、必死だな」
「そんなんじゃないです、とにかくこっち!」
政宗さんを引きずり、寝室の向かいにあるリビングへ連れて行く。
必死に決まってるだろ、馬鹿。
この人は変な所で勘がいいから…侮れない。
とりあえず、美依の支度が終わるまで、ここでコーヒーでも飲んでもらって…とか。
寝起きの頭をフル回転させ、考えていると……
「あれ、政宗?!」
リビングに入ったところで、寝室の方から美依がきちんと着替え終わって姿を現した。
政宗さんと二人して振り返って……
俺はその美依の姿を見て、若干胸を撫で下ろす。
特にパッと見は何もないように見えるな。
確かにキスはしたし、服ははだけさせたが、それ以上は何もないし……
今の美依は、昨日飲み会で会ったままの、そのままの姿に見えた。