第27章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【前編】/ 徳川家康
「う…うぅーん……」
「……」
何の危機感もなく、眠る美依。
それは、俺に完全に気を許しているのか。
それとも……男として見られていないのか。
『あの日』も、そうだった。
1月31日、俺の誕生日。
放課後、人気のない教室。
『家康、今日誕生日だっけね!』
美依はそう言って、
俺に無邪気に笑いかけ……
『誕生日プレゼント、あげるよ。
何か欲しいものとかある?』
何の疑問も抱かず、
俺にそう問いかけた。
だから、俺は言ったんだ。
────美依が欲しい、と
「美依……」
手を伸ばし、眠る美依の頬に触れる。
少し撫でれば、美依は眠りながらも、気持ち良さそうに笑みを作った。
火照った、赤い肌。
唇からは、少し浅めの吐息が漏れ……
それは、何故かとても煽情的に見える。
呼吸の度に、上下する胸元すら。
まるで俺を煽っているような、そんな動きに見えた。
『やぁっ…いえ、やすっ………!』
呼び起こされる、『あの日』の美依。
誰もいない、教室の中。
俺の指で、唇で、気持ち良さそうに乱れてよがって。
肌を赤く染めながら、体温を上げて……
初めて見た、美依の淫らな姿。
それは有り得ないくらい可愛くて、綺麗だった。
あんた、ばかだね。
その状況……
今作って、どうするの?
「自分を恨みなよ、美依」
「んー…んぅー……」
「全部…自分で巻いた種なんだから」
美依のコートを脱がせて、自分のコートも脱いで放り投げる。
シャツのボタンを片手で外すと……
そのまま美依に覆いかぶさって、顔の横で手をついた。
無防備に眠る、柔らかな寝顔。
そんな顔…俺に見せていいの?
彼氏はどうしたんだよ。
法学部だった…イケメンの彼氏は。
可笑しいね、美依。
(いや……俺の方がおかしい、完全に)
自分に嘲笑が漏れる。
それでも、俺はそのまま顔を近づけ……
その柔らかな唇を、
己の唇で塞いだのだった。