第27章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【前編】/ 徳川家康
「い、え、や、しゅ〜〜〜」
「あーもう、大丈夫、美依?」
「いえやしゅも飲もうじぇーー!」
「誰だよ、こんなになるまで飲ませたの!」
デロンデロンに酔っ払った美依を見て、深くため息をつく。
美依はもうかなり出来上がっていて…
俺にもたれて座りながら、きゃたきゃたと楽しげな声を上げていた。
「ちょっと美依、水飲んで、水」
「おしゃけがいいーー!」
「だめでしょ、これ以上飲んだら!」
「うっわ、美依出来上がってんなー」
その時、俺達の様子を見て、幹事が苦笑しながら話しかけてきた。
俺と美依を交互に見て……
しばらくうーんと唸っていたが、やがて。
幹事はとんでもない『提案』を俺にぶつけた。
「家康、美依連れてもう帰れ、な?」
「は…?美依を連れてって…完全に酔っ払っいを押し付ける気だろ」
「タクシー拾ってやるからさ」
「大体、美依って家どこ」
「知らん」
「あんた…幹事じゃなかったの?」
そんな事を言ってる間に、あれよあれよとタクシーを呼ばれ、俺は美依と共に飲み屋から、ぺいっと追い出されてしまった。
後で覚えとけよ……!
そんな事を考え、頭痛くなりながら、タクシーの中でまたひとつ大きなため息をつく。
美依と言えば、もう半分夢の中。
でも、家の場所を言ってくれねば、送ってやる事も出来ない。
俺は美依の頬をぺちぺち叩いて……
何とか夢の中から引き戻すと、美依に必死に話しかけた。
「美依、家はどこ?住所言って」
「うぅ〜ん…T区の〜K町……」
「それは大学の場所!」
「家康と同じとこ帰るぅぅ〜…」
「あーもう、それはだめだから!」
「お客さーん、どこ向かえばいいんですか?」
後ろでぎゃーぎゃーやる俺達に、タクシーの運転手が困ったように聞いてくる。
その間にも、美依はぐっすり寝てしまい…
もう美依を正気にさせるのは、無理かもしれない。
そう悟った俺は、自分の膝に美依の頭を乗せて寝かしつけると、何度目か解らない深いため息をついて、運転手に答えた。