第27章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【前編】/ 徳川家康
『家康、なん、で……』
『しー…人が来たら困るでしょ』
『で、でもっ……』
『あんたが言ったんだよ、誕生日プレゼントくれるって』
『……っ』
『お願い、美依』
『────あんたの"初めて"、俺に頂戴』
(今思えば馬鹿だったよな、俺)
思い返せば、とんでもない事をしたのだと理解出来る。
若気の至り?
いや…ただの暴走か。
想いが募って、抑えられなくて。
それでも、美依は──……
こんな俺に、優しく接してくれたんだ。
『無かった事にしようね、家康』
『美依……』
『私達は何も無かった……ね?』
『あの日』の行為は、俺達の中では『一切無かった』ことになり。
次の日からもいつも通り。
卒業すれば、就職先もバラバラで……
俺の想いは未消化のまま、今日まである。
奪えば、何もかも満足すると思ったのに。
それは計算違いで、今も燻ったまま。
心までは…繋がることは出来なかったから。
ねえ、美依?
────あんたの心は、誰のものなの?
「家康?」
「……っ」
美依に名前を呼ばれ、我に返った。
しまった、感傷に浸っている場合ではない。
せっかく美依と再会出来たのに。
今日を逃したら、今度はいつ会えるか解らない。
消化出来ない想いがあっても……
今日くらいは楽しく過ごしたっていいはずだ。
「ごめん、考え事」
「そうなの?悩み事?」
「そんなんじゃない、ほら飲みなよ」
「うん、いただきまーす!」
それから、美依とたわいない話をしたり、同級生に絡まれたりしながら、あっという間に飲み会の時間は過ぎていった。
相変わらず愛想のいい美依は、みんなから構われ、時に席を外して話しに行ったりしていたが……
何故だろう。
必ず俺の隣の席に戻ってきた。
少しは懐かしいと思ってくれているのかな。
それとも…下心ありなのか。
……美依に限って、それはないな
そんな風に時は過ぎ、いつの間にか飲み会も終盤。
そんな時……
俺に『災難』が降りかかったのは、ちょうど終電も終わってしまった、そんな時だった。