第27章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【前編】/ 徳川家康
「……なんか、すごいぎゅうぎゅうだけど」
紗奈を送った後、自分のマンションに帰った俺は、ポストに詰め込まれている手紙類を見て、またため息をついた。
それを手に取りざっと目を通せば…
獣医師会の学術学会の知らせやら、ピザ屋のチラシ、DMとか。
重要なのと、そうでないもの。
ごっちゃごちゃになっているので、何がなんだか。
と、ひらりと葉書が一枚足元に落ちた。
それを拾い上げ、裏を見て…
そして、目を見開いた。
それは、大学の同窓会の知らせだった。
『同窓会と言っても、仲良しメンバーだけの
小さな飲み会です。家康もぜひ参加してね!
日時:1月21日、19時から
場所:────………』
「1月21日って…10日後?誰、こんな近々に決めたの」
思わず、眉をひそめる。
社会人になれば、せめて一ヶ月後とかさ。
ここが、同級生クオリティと言うか…
それが感じられて、なんか気が抜けてしまった。
そして、ふっと頭を過ぎる。
同窓会、となれば──……
「あの子も、来るのか…?」
一瞬、不参加も考えたけれど。
その考えが頭を掠めた瞬間、俺の意志は無条件に『参加』へと傾いていた。
懲りないよな、俺も。
別に『あの子』に会った所で、何も変わるはずもない。
今はもう、紗奈がいる訳だし…
どうこうする気も、どうこうなる気も、更々ないし。
(でも、会えるなら、会いたい…かな)
そこそこに不純な動機も芽生える。
そんな自分に呆れながら、その夜は過ぎていった。
学術学会とか、もっと大切な知らせもあったのに。
そんなのには目もくれず…
久しぶりに昔のアルバムなんか開いたりして、それなりに同窓会を楽しみにしながら、10日が過ぎたのだった。
*****
「N大学、獣医学科メンバーの、久しぶりの再会にカンパーイ!!」
1月21日19時、大学近くの小さな飲み屋。
そこを貸切り、大学の同級生達の同窓会はスタートした。
総勢20人といったところだろうか?
こんなに間近の招集だったのに、社会人がよく集まったと思う。
俺が店に顔を出したら、居るメンバー全員が目を丸くしたもんだ。
まぁ…こーゆー集まり、あまり参加したことなかったし。