第26章 【Xmas企画】甘い彼氏はサンタクロース / 織田信長
「これは……?」
中には、小さな金属の鍵が入っていた。
そして、その鍵には紙が結んであって。
それを開いてみると、そこには『文机の前』とだけ書かれてあった。
文机の前って天主の文机だよね?
疑問を抱えながらも私は起き上がり、壁に掛かっている信長様の長着を拝借して、それを着て起き出した。
(文机の前に何があるんだろう……)
ドキドキと逸る気持ちを抑え、私は信長様がいつも使っている文机へと足を運ぶ。
隣の部屋には、やっぱり信長様はいない。
でも──……
信長様の文机の前には、大きな桐の箱が置かれているのが解った。
駆け寄ってみれば、確かに鍵が掛けられていて。
つまり、この箱の中身が信長様からの『クリスマスプレゼント』なのだろうと。
そう思った私は、ごくっと一回息を飲み。
震える手でその手に持った鍵で、箱の鍵を開け、ゆっくりと蓋を開いた。
「えっ………!」
蓋を開けた瞬間。
私はびっくりして、思わず目を見張った。
その箱には……
純白のウェディングドレスが入っていたからだ。
それに、ティアラに白い手袋。
真っ白な靴まで……
「うそっ、うそぉ……」
そんな言葉と共に、視界が滲む。
確かに『これからも幸せな時間を過ごしたい』と、私は信長様に言った。
それを、信長様はこんな形で叶えてくれるの?
私に貴方の妻になれと。
これを着て、貴方の横を歩く未来を。
────貴方は私に約束してくれるの…?
「起きたか、美依」
その時、部屋の入口から声がして。
振り返れば、信長様がゆっくりと中に入ってくるのが解った。
その口元には不敵な笑みを浮かべて。
まるで、私の反応を解っていたかのような、余裕のある表情。
私はなんだかそれが悔しくて……
傍に来た信長様の胸元にしがみつき、思わず胸板をこぶしでポカポカと叩いた。
「ずるい、ずるいです、こんなの……」
「さんたくろーすからの贈り物だろう、気に入らなかったか?」
「……っ、嬉しすぎるから悔しいんです」
「そうか、ならば良い」
すると、信長様はくすっと笑って、私を優しく抱き締める。
包まれた温もりから……
愛しい人の大好きな匂いがふんわりと漂った。