第25章 〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて / 石田三成
「おや、愛しい男の登場か。良かったな、美依。消えないように、また付けてもらうといい」
「だ、だから、なんでそーゆー……!」
「消えないように…とは、何かありましたか?」
「三成、お前も少し女の立場になってやりなよ」
「家康様、どういう意味でしょうか?」
また顔を真っ赤にして光秀様を睨む美依様。
私が家康様の言葉の意味が解らず、疑問符を浮かべていると……
光秀様がにやりと笑い、自分の首筋をトントンと指で叩いた。
「美依の"ここ"だ」
「……?」
私は言われた通り、美依様の細い首筋に視線を落とす。
すると──……
そこには、ありありと『私が愛した証』がくっきりと赤い花びらのように残っていて。
なるほど、これを言われていたのかと。
ようやく家康様の言葉も理解出来た。
「すみません、美依様。見える場所に痕が……」
「い、いいの!三成君は悪くないよ!」
「お前は美依を愛しただけだろう?美依の不安も消えただろうし…まぁ美依が多少痕が残りやすい体質であっただけだ」
「それをからかう材料にするなんて悪趣味ですよ、光秀さん」
「相手の弱点を突くのは俺の得意技だ」
飄々と言ってのける光秀様に、思わず苦笑してしまう。
これは…次は気をつけませんとね。
痕が付く度に、からかわれるのは美依様が可哀想だし……
(そんな色っぽい秘密は、私だけのものにしておきたい)
また滲み出る独占欲。
ああ、やっぱりとことん惚れているな。
それを思えば、こんな言葉もすんなり出る訳で。
「光秀様、あまり私の美依様をいじめないでください。この方にそうしていいのは……私だけです」
「……っ、三成君!」
「ほう、言うようになったじゃないか、お前」
「でも…お話は伺ってますよ、お酒の件。光秀様、家康様、本当にありがとうございました」
でも、お礼はしなくてはと頭を下げれば、光秀様も家康様も少し嬉しそうに笑みを返してくれた。
そして──……
金木犀のお酒によって美依様に『誘惑』された私は、そのもう一つの意味を知る。