第25章 〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて / 石田三成
「三成、あの金木犀の酒だがな」
「はい、光秀様」
「金木犀はもちろん"誘惑"の意味があって美依に持たせたが…理由はそれだけじゃない」
「……と、言いますと?」
「このような意味もあると、覚えておくといい」
────『真実の愛』と『陶酔』だ
あの香りは、どんなに離れていても
相手の元へ届くと言うからな……?
『金木犀』
それは、香りが漂ってきて、
初めて開花を認識することが多い。
花の見た目は、決して桜のように
華やかではないが……
一度その香りに出会ってしまえば、
二度と忘れる事は出来ない。
そして、その甘く強烈な香りは
遠方までも届く。
それは、一途な愛を連想させ……
想いの深さを象徴する。
ああ、貴女に"陶酔"している私は、
きっと貴女の甘い香りに魅せられた……
やはり、蝶々のようなものなのだ。
「美依様」
「なに?」
「今夜、また桂花陳酒を飲み直しましょう」
「えっ……」
「貴女に何度も誘惑されたいです」
「み、三成君……!」
「────美依」
「……っっ」
「ね、いいでしょう……?」
こうして、また夜に蝶が飛ぶ。
甘い香りの蜜華に群がって……
その蜜を吸い、水を注ぐ。
きっと、今宵も交わる月影が障子に映って。
淫らな甘声が、絶え間なく響き渡るのだ。
堕ちる夜の再来を。
そして、甘やかで幸せな夢を。
貴女と見られるならば──……
何度でも『誘惑』されましょう?
それは、私なりの『真実の愛』の形。
魅せられ、溺れても、尚。
一途な想いだけは、貫けるから。
貴女へ、全ての熱を注ぐ。
今宵も美しく艶やかに咲いてください。
私だけの、たったひとつの魅惑の華。
魅入れば至福、天花のような貴女。
〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて
了
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Mitsunari Ishida