第25章 〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて / 石田三成
「……誘われた私は、蝶々かな?」
「え?」
「貴女と言う花の匂いに誘われて、逃げられなくなった蝶々です」
「三成君……」
「見事、策は成功ですよ、美依様」
華奢な背中を撫でながら、想いを告げる。
どれほど私が臆病だったか。
貴女を大切にしすぎて、盲目になっていたか。
でも、もう逃げない。
逃げられない、囚われた蝶々ですからね?
「貴女を大切にしすぎて、先に進む事を躊躇していました。貴女を汚す事が……怖かった」
「……っ」
「でも、今吹っ切れた気がします。貴女と交わる事は、きっと汚すとか穢れるとかではなくて……」
「では、なくて?」
「きっと、幸せに満ちるって事なんですね」
想い合って、身体を重ねる。
それは『一つ先の幸せ』を見る事なのだ。
私は、その覚悟がなかったのかな。
貴女と見る未来なら、幸せしかないのに。
でも、ようやく解った気がする。
貴女が一歩踏み出そうとしてくれたから。
私も貴女と手を繋いで、足を出すのだ。
────誕生日に、これ以上の贈り物はない
「では、いざ」
「きゃっ……」
私が身体を離し、立ち上がって、ひょいと抱き上げると、美依様は急いで首に腕を回してきた。
随分軽いなぁ、中身はありますよね?
それをしっかり確かめませんとね、美依様。
「誕生日の贈り物、有り難く頂戴します」
「みつ、なり、くっ……」
「……褥、お借りしていいですか?」
「……っ、う、うんっ……」
「お覚悟してくださいね、美依様?私…あんまり優しい人間では無いので」
どんな書物にも書かれてはいなかった。
人を愛する気持ち。
どれほど熱いのか、どれほど苦しいのか。
そして──……
貴女を想えば、強くなれる事も。
軽すぎる小さな身体が愛しくて。
これから訪れる甘い夜に、思いを馳せた。
誕生日にもらった、最高の贈り物。
それを自分の熱で、最高潮に蕩かす。
そんな幸せの刹那を、夢見て。
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