第25章 〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて / 石田三成
「美依、様っ……」
「あ、三成、君っ……」
次第に身体をまさぐり始めた手が、身体の線を確かめるように動いていく。
薄い着物越しに、美依様の身体も熱を帯びているのが解って。
それを感じたい一心で、その襟元に手を掛けた。
このまま、美依様を私のものに。
だって恋仲なのだから、良いじゃないか。
そうする権利はあるはずだろう?
心が大きくなる。
火照った身体も、敏感になる。
そう、『私自身』も芯を持ち始めて……
────この御方を男の欲に染めるのか?
(あ…………)
そこまで考えた時。
自分の中で、何かが歯止めを効かせた。
この綺麗な方を、汚していいのかと。
真っ白で、純粋な、この御姫様を……
『男の色』で塗りつぶしていいのかと。
ダ
メ
ダ
この御方は綺麗でいなくては
私が汚してはならない
大切な、大切な御姫様だから
何よりも愛しい者だから
────決して穢れてはならない
私の、たった一つの宝物なのだから
「三成、君……?」
ピタリと動きを止めた私を、美依様が切なそうに見上げてくる。
駄目な私、匂いに煽られたからと……
つい暴走しそうになってしまった。
「ごめんなさい、美依様」
「え……?」
「怖かったですよね、いきなりこのようにされたら」
「……!」
「何もしませんから、安心してください。今日…やはり私はおかしいですね、お酒も一酌しかしていないのに」
ゆっくり上半身を起こし、美依様の身体も起き上がらせて苦笑した。
少しだけ頭が冷えて、落ち着きを取り戻す。
そこまで酔いやすい質ではないが、美依様が用意してくれたからと油断してしまったかな。
なだめるように美依様の頭を撫でると……
何故か美依様は、少しふてくされるように俯いて。
そして、ぽつりと。
聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟いた。