第25章 〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて / 石田三成
「積極的な私はお嫌いですか?」
「えっ…そんな事、ないよっ……!」
「ならば…もう少し、いいですか」
「……っっ」
答えも聞かぬまま、やんわりと瞼に唇を押し当てる。
滑らかな肌を辿るように、瞼から鼻筋を通り、頬の高い場所から顎まで、順々に口づけていくと……
美依様はきゅっと唇を結び、微かに肌を震わせた。
「美依様、やっぱり今日はいい香りがしますね」
「そう、かな……」
「ほら、喋るたびに甘い匂いがする。すごく…惑わされるような、そんな気分になります」
「んっ……」
そのまま唇を塞ぐと、美依様は小さく息を詰める。
柔らかい唇を割って、中に差し入れて。
湿った美依様の舌も絡め取ると、たどたどしくそれに応えてきた。
(ああ、可愛いなぁ……)
この御方が可愛らしいのは、端から知っているが、今日は何故か一段とそれが増している気がする。
それに思った通り、口の中も甘い。
先程一酌だけ飲んだその味と、同じだった。
やはり、美依様は先に召し上がられていたのだ。
とても、くらくらする。
その味と、香りに。
神経まで研ぎ澄まされて、触れ合っている部分から麻痺してしまいそうだ。
────トサッ!
気がつけば、私は縁側に美依様の身体を押し倒していた。
柔らかな身体を、己の身体で覆うように。
口づけも深くなり、絡み合う舌同士がちゅくちゅくと儚い水音を立てて……
名残惜しくも離してみれば、いやらしい銀糸が唇の間を伝っていた。
見れば、美依様の瞳も、とろんと蕩けていて。
ああ、これはまずい。
そうは思っても、昂り始めた心と身体は、すでに破錠しかけていた。
「美依、様……」
「三、成、君……」
「私、今夜は少し変かもしれません」
「え……?」
「いつもなら我慢出来るのに、なんか変に昂って……」
「あっ……」
思わず、その首筋に噛み付いてしまったら、美依様が焦がれたような声を上げた。
瞬間、カッと身体が熱を帯びる。
まさか『あの夢』は予知夢だったのか。
美依様に触れられるという。
その甘い香りに誘われるがまま──……
『この先の行為』を期待していいのか?