第25章 〖誕生記念〗月下の蜜華に魅せられて / 石田三成
(夢みたいに、抱いてしまえたらな……)
美依様が着物を乱している姿なんて、見た事がない。
だから、あれはやはり私の想像で。
えげつない欲求が見せた世界なのだと思い知る。
でも──……
本当にあんな風に抱けたらいいのに。
それを思えば、ちくりと胸が痛んだ。
美依様が大切で。
私にとって宝物で、何より綺麗なもの。
だから、躊躇う。
あの方に触れるのを、先に進む事を。
醜い男の欲で、汚してもいいのか。
白いあの方が、穢れてしまわないだろうかと。
────関係を進める事に、躊躇している己
(こんな夢を見ている時点で、もう限界かもしれない)
目の奥に浮かぶのは、あの淫らな美依様。
それを思えば、じわりと身体が疼いた。
こんなの、情けない。
でも、情けなくても……欲しい。
私は胡座を搔くと、ほのかに熱を帯びている『己自身』に手を伸ばした。
硬くなりかけている、ソレ。
ああ、夢のせいで欲情してしまった。
収めるのは……自分自身でしかない。
自分で慰めて、火照りを冷ますしか。
「んっ…美依っ……」
その日、私はなかなか褥から出られなかった。
扱いて、擦って、小さく熱い吐息を漏らして。
そうやって、昂った己を必死に鎮めた。
今日は私の誕生日。
夜には美依様と逢瀬の約束がある。
一日の始まりがこんな風になるなんて……
私はそれが、ひたすらに情けなくて。
でも、それでも──……
あの方は汚せないと、頑なに契る事からは目を逸らしていたのだった。
*****
「美依様、お招きありがとうございます」
日中の公務を終え、私は美依様との逢瀬の為、夜に美依様の自室を訪れた。
今宵は一緒に月見をする事になっている。
二人きりで月を見ながら、私の誕生日を祝いたいと…美依様から誘いを受けたのだ。
私が声を掛けて襖を開くと、美依様は満面の笑みで迎え入れてくれて。
私を見上げながら、小さな手がきゅっと私の手を握った。