第3章 〖誕生記念〗揺れる桔梗と初染秋桜《後編》/ 明智光秀
「お前の気持ちは、どうなんだ?」
「だから、あげてもいいと……」
「そこじゃない。あげてもいいとは、つまり俺の事をどう思ってるんだ?」
俺がしっかり美依と向き合い、真摯に問うと。
美依は肌を震わせながら、再度瞼を開いた。
黒い瞳の中に、俺をしっかり映して。
そして、俺を捕まえるように……
視線を絡ませながら、愛らしい台詞を吐いた。
「光秀さんが、すきです……」
(……っっ)
その一言で、ガツンと脳天を殴られたような衝撃を覚える。
好き、と言ったか、今。
俺のことが好きだと。
くらくらするような感覚を覚えながら……
俺は美依に、疑問を投げかけた。
「しかし、お前は一昨日までは静馬が好きだったのだろう?」
「光秀さんは私を助けてくれた時、俺だけを信じていろって言ったでしょう?あの時、私…全てを奪われた感覚がしたんです。心が丸ごと、搔っさらわれたような」
「……」
「その時思いました。この人の傍にいたいって…ずっと守ってほしいって。たった一瞬で惹かれたんです、貴方に」
まるで、染み入るように……
美依の言葉が、心に溶けていく。
美依はふにゃりと笑って。
その華開いた笑顔に、さらに魅せられる。
「光秀さん、お誕生日おめでとうございます。良かったら、贈り物として……私をもらってくれませんか?だいすきです、貴方が…本当にだいすきです、光秀さん」
(美依……)
本当に、この小娘は……
感情のままに身体が動いて、考えナシで。
今の状態、俺を煽っている自覚はあるのか?
襦袢一枚で『私をもらってください』など。
生娘から出る発言ではないのだがな。
「なんで笑うんですか?!」
思わず、ぷっと吹き出すと、美依は目をぱちくりさせて不満の声を上げた。
本当に解っていないな、美依は。
まず、自ら脱ぐなんて……
俺の楽しみを奪っているだろう?
俺はそっと美依の頬に指を滑らせ。
少し悪戯っぽく瞳を覗き込みながら、『合意』した行為の先を答えてやる。