第24章 〖誕生記念〗艶やか椛と嫉妬の蜜菓子 / 明智光秀
(これはまた、随分……)
丸い焼菓子の上に、ふんだんに乗った果物。
その上からは、粉砂糖が掛けられ…
別途で小さな瓶には、蜜が入っている。
これをかけて食べろ、と言う意味か。
甘い匂いもぷんぷんしているし。
俺がその甘ったるそうな甘味から、視線を美依に戻すと…
美依はにっこりと微笑み、鈴を転がすような、可愛らしい声で、俺に告げた。
「光秀さん、お誕生日おめでとうございます!お祝いに、甘味を用意しました。きっと美味しいと思うので、食べてみてください!」
その、得意げな顔。
目をきらきらさせ、まるで新しい玩具を与えられた犬っころのようだ。
でも、それを言ったら機嫌を損ねそうなので…
俺はぷっと吹き出し、胡座に頬杖をつきながら、目の前の美依を見た。
「俺の誕生日は明日だぞ、美依」
「誕生日にみんなと一緒にお祝いするんじゃなくて、誰よりも私が一番にお祝いしたかったんです」
「……」
「明日は宴もあって忙しいし…日付変わったら真っ先におめでとうって言いたいので」
(……なんだ、その愛らしい理由は)
美依の言葉に、心が甘く疼く。
だから、こんな夜遅くに甘味を持ってきたのか。
誰よりも一番に祝いたいなど。
そのように可愛らしい事を言われては、素直に食うしかないだろう?
俺は手を伸ばし、美依の頭に触れる。
そして、その小さな頭を優しく撫でた。
「ありがとう、美依」
「はいっ!」
「しかしどこがちょっとした甘味だ。夕餉に匹敵するくらい量がありそうだが?」
「あ、すみません……」
「まぁ、食うがな。だったら…」
頭から手を滑らせ、そのまま頬に触れる。
白い滑らかな頬を撫でながら…
俺はくすっと笑い、その顔を覗き込んだ。
「お前が食わせてくれ、俺に」
「えっ…」
「出来ないのか?」
「で、出来ます!」
「なら、いいだろう?きっとお前の手から食べれば、何倍も美味い」
そう言えば、美依の顔が恥ずかしそうに赤く染まる。
駄目だ、どんな顔をしても可愛い。
笑った顔も、照れた顔も…最高に愛しい。
だがな、美依?
愛しいからこそ……
嫉妬したりするんだ、俺は。