第24章 〖誕生記念〗艶やか椛と嫉妬の蜜菓子 / 明智光秀
────愛しくて愛しくて仕方ない
燻り渦巻く、俺の中の激情。
美依を好きになって、いつしか隠しきれなくなって。
でも──……
それを美依は受け入れてくれた。
『私も光秀さんが大好きですよ』と。
俺の全てを受け入れ、たとえどんな汚れ仕事をしようとも、真っ直ぐな瞳で俺を見守ってくれる美依。
俺の誕生日を、生まれた事を…
ああやって喜んでくれる、可愛い美依。
(やれやれ…溺れた方の負けだな)
その椛の赤を映して、目を細める。
いつの間にか鮮やかに色付いた恋心。
お前は眩しく、そして……
いつしか俺を、極彩色に染め上げたのだな。
この誕生日の度に染まる、椛のように。
一体美依はどんな甘味を用意してくれるのだろう。
それを思うだけで、心が満たされる。
さっき感じた嫉妬心も秋の空気に溶けて…
ほんの少しだけ、己が清らかになった気がした。
*****
「光秀さん、ちょっといいですか?」
その日の夜。
自室で書簡を読んでいた俺の元に、美依がひょっこりと顔を出した。
やれやれ、こうして顔を合わせるのは、美依が城に行くと顔を見せた時以来だ。
……まさか。
こんな遅くまで、城で秀吉と甘味作りをしていたのではあるまいな?
若干疑問を持ちながらも、俺は静かに書簡を閉じた。
「ああ、どうした」
「光秀さんに食べてもらいたいものがあるんです」
「今からか?もう夕餉は済んだだろう」
(誕生日は明日だが…もう甘味を持ってきたのか?)
よく見れば…
美依は背中に何かを隠しているのが、まる分かりで。
どこかそわそわしている様子からも、その例の甘味を持って来たのだと、すぐに理解出来た。
本当に隠すのが下手な小娘だ。
まぁ、そこが最高に可愛いのだが。
「ちょっとした甘味なので」
「まぁいい、側においで」
「はいっ」
手招きして呼べば、美依は満面の笑みを浮かべて、部屋に入ってきた。
そして俺の側に座ると、背中に隠しているそれを文机に置く。
置かれた、その甘味を見て…
俺は思わず、目を丸くさせた。