第24章 〖誕生記念〗艶やか椛と嫉妬の蜜菓子 / 明智光秀
この感情の名前を俺は知っている。
そう『嫉妬』という、くだらない感情だ。
そのくだらない感情にヤキモキする、俺自身がくだらないのかもしれない。
だが──……
気に食わないことは確かだ。
好きな女が喜んで他の男に会いに行く。
誰が面白いと感じると思う?
「三成、情報提供感謝する」
俺は敢えてにやりと笑い、再度三成の持つ本の山に、手に取った本を乗せ直した。
本当は部屋まで運んでやろうと思ったが…
早々に行かねばならない場所が出来てしまったからな。
また本を抱えて歩き出す三成を見送り、俺は早速台所へと足を運ぶ。
美依が楽しげにしていた理由がこれなら。
少し…美依には解らせる必要があるな。
────俺以外の男に
そのように楽しげに会いに行くな
「秀吉さん、こんなもんかな…」
「そうだな…味見してみるか?」
台所まで行き、その戸の所から中を覗くと、そこには確かに秀吉と美依が居た。
なにやら料理をしているのか。
肩を寄せ合い、たまに顔を見合わせて笑い合っているのを見て…
そのやたら楽しそうな雰囲気に、声を掛けるのを躊躇ってしまう。
「あ、なかなかに美味しい!」
「なら良かった。俺にも一口くれるか?」
(……美依と距離が近い、秀吉)
美依が匙で何かを掬い、それを秀吉の口に運ぶ。
『あーん』されて、心做しか秀吉も満足げにも見えた。
その後も、美依が作業している横で、それを温かな目で見つめる秀吉が居て。
たまに何かを指摘しながら、自分の手を美依の手に添え、手伝ってやっている。
その仲睦まじげな光景は、俺をこの上なく苛立たせ…
心の中が、さらに黒い空気で包まれた。
『美依に触れるな』『近づきすぎだ』
そんな馬鹿みたいな嫉妬心が押し寄せる。
それは、秀吉に?
それも勿論あるが──……
それを許している美依にも。
激流みたいな独占欲が、俺を支配して。
────今すぐ連れ去りたい
そんな激情に飲まれかけた。
と、その時。
後ろから肩を掴まれ、ぐっと後ろに身体を引かされた。