第24章 〖誕生記念〗艶やか椛と嫉妬の蜜菓子 / 明智光秀
────愛しくて堪らない、俺の美依
今や恋仲となった俺達。
沢山のすれ違いや葛藤もあって…
それでも、結び合えたのは奇跡だと思う。
美依を好きになって、俺はとても我儘になった。
あんなに自分は二の次だったのに。
美依の事になると、どうしても我慢出来なかったり、自制が効かない事が暫しある。
それでも、美依は傍に居てくれるから。
傍で、笑ってくれるから──……
(お前が居れば、俺は全て満たされるよ)
もう、独りになんて戻れまい。
温かさを知ってしまった、今では。
また、くすっと笑みが漏れる。
それは嘲笑ではなく、作り笑いでもなく…
心の底からの笑みだと。
何故かそう感じずにはいられなかった。
*****
「あれ、光秀様?」
それから一刻ほどして登城してみると、廊下で本を抱えた三成と出くわした。
相変わらず、本の虫だな。
寝癖は直っていないし、秀吉がまたなんだかんだと世話を焼きそうだ。
そんな事を考えながら、三成の腕の中で崩れそうになっている本の山から、何冊かひょいと取ってやる。
さすれば、三成は目をぱちくりさせ…
何の邪気も感じられない笑みを見せた。
「光秀様、ありがとうございます」
「相変わらず危なっかしいな、お前は。世話を焼いてくれる秀吉はどうした」
「秀吉様なら美依様と台所ですよ」
「美依と台所?」
「…あ、しまった」
三成が焦ったように口を噤む。
秀吉と美依が城の台所に?
しかも、この三成の様子だと…
俺に知られたらまずい、という様に受け取れるのだが。
(そう言えば、さっき……)
『城に行く』とやたら楽しげにしていた美依を、ふと思い出す。
まさかとは思うが…
秀吉に会うのが楽しみだったと言うのか?
────少々、癪に触るな
それを考えた途端。
もやっと心にドス黒い感情が沸き上がった。
あの時、何かを隠す様に目を逸らした美依。
それは、秀吉に会うのを隠していたからなのか。
あの二人が兄妹のように仲が良いのは知っているが…
何故、俺に知られたくない?
まさか、何かやましい事が──……?