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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第3章 〖誕生記念〗揺れる桔梗と初染秋桜《後編》/ 明智光秀





「光秀、誕生日おめでとう!!」






それから、二日後の夜。
安土城の広間で、俺の誕生日を祝う宴が、それはそれは賑やかに執り行われた。

毎年毎年、よくやるものだと。
嬉しがりもしない俺のために、何故こんなに張り切ってやれるかが、本当に疑問だ。


────まぁ、今年は美依がいるから


料理も多分美味く感じるし、酒もきっと美味い。
それだけで、いつもの誕生日とは違うなと、それは感じていた。

政宗やら三成やら、皆にわいわい祝われ、美依とはろくすっぽ話す事もないまま宴は過ぎていき…

やがて、蜂蜜色の月が煌々と濃紺の夜空を照らす、夜深頃。
一人で庭を眺めながら酒を飲んでいた俺に、秀吉が声を掛けてきた。




「光秀、そろそろ終宴にしようかと思うんだが……」

「ああ、構わないぞ」

「片付けはみんなでやっとくから、お前は美依の部屋に行ってくれないか?」

「美依の部屋に?」

「美依からの言伝でな、お返事をしたいので、宴が終わったら部屋に来てくださいと光秀さんに伝えてって」




秀吉の言葉を聞き、手酌が止まる。
『お返事をしたい』とは、つまり…
美依の中で、答えが出たと言うことだろうか。


(まだ二日しか経っていないが…大丈夫か?)


妙な緊張感が襲う。
もしこれで、美依に拒まれたりしたら…

そんな事を考えていると、秀吉が怪訝な顔をして、こちらの顔を覗き込んできた。




「怪しいな、美依と何かあったのか?」

「お前には関係ない、秀吉」

「美依は大事な妹だ、やらねぇぞ」

「……それは知らん」

「はぁ?!」

「なんでもない、片付けを頼んだぞ」

「おい、光秀っ……!」




なんだかぎゃんぎゃん騒ぐ秀吉を放っといて、俺はさっさと美依の部屋に向かった。

向かう最中、酷く心臓が高鳴って。
受け入れるのか、拒まれるのか。
美依はどちらを選んだのか気になって、やたら早足になってしまった。


(俺らしくもない、何を緊張している)


そうは思ったが、ざわつく心は抑えきれなくて。
そうか…と、一人納得してしまった。
きっと俺は、すでに美依に溺れていて、


────どうしようもなく、焦がれて止まないのだと







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