第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗
「何やってんですか、二人とも!」
「落ち着け、光秀、政宗!美依の部屋で何やってる!」
それは、家康と秀吉だった。
光秀は秀吉に、俺は家康に背中から抱き込まれ…
それでも俺が光秀に食ってかかろうとすると、後ろから振り上げた手首を掴まれてしまった。
「ま・さ・む・ね・さん!」
「家康、止めるんじゃねぇ!」
「落ち着いてください。膳までひっくり返して、何やってんですか!」
「え……?」
その言葉に、目を見開く。
視線を畳に移せば、無残に部屋に転がった料理や碗が目に入って。
さっき蹴飛ばしたのは、これだったのか。
それを思えば、カッとなってた頭が一気に冷えた。
俺が、食いもんを足蹴にするなんて。
しかも…美依が作った祝い膳を。
「悪い、美依……!」
「大丈夫。政宗、口切れてるよ!」
「あ、ああ……」
頭が冷えてみれば、真っ青になって俺を見る美依にも気づいて。
光秀もバツの悪そうに視線を泳がせた。
そんな俺達を見た秀吉と家康は、ようやく身体から手を離し、呆れたように言葉を紡いだ。
「とりあえず手当てするから、光秀は隣の部屋に来い。美依、政宗は任せていいか?」
「う、うん……」
「ほんと、大の大人が殴り合いなんてみっともないですよ。部屋も片付けないと」
「それは俺がやる、俺の飯だからな、それ」
「……美依、悪かった」
光秀も、本当に済まなそうに謝って。
秀吉はそのまま光秀を連れて、部屋を出ていった。
家康もそれに続いて、部屋を後にする。
残された俺と美依は、お互い無言で立ち竦み…
やがて美依が、手を伸ばしてきて、俺の切れた口端に指で触れた。
「……っ」
「手当てしよう?」
「食うから、飯」
「え?」
「畳に零れたの、食う」
「政宗……?!」
俺はどっかりと胡座を掻くと、手を伸ばして鴨の揚げ物を拾い上げた。
そして、それを口に運ぶ。
柚子の風味と、香りが鼻に抜けて…
ああ、やっぱり美味いな。
そう思ったら、自然に笑みが零れていた。
だが、それを見て許さないのが美依で。
俺の隣に座り込むと、顔を覗き込みながら、目を釣り上げた。