第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗
「そんなの、食べなくていいから…!」
「俺の飯だ。しかもお前が作ったんだ、どんなご馳走より価値がある」
「政宗……」
「それを足蹴にするなんて、俺はとんでもない事をした。だから、どんな状態でも食う。それは土ががついたり、ホコリまみれになっても同じだ」
「……」
横になった貝の汁物の碗を拾い、残った汁を口に流し込む。
そんな俺の様子を見て…
美依は俺の膝に、そっと両手を置いた。
そして、今度は少し瞳を潤ませて見てくる。
それは、とても愛らしく、どこか煽情的で。
紡いできた言葉は、それを確信しているような、そんな問いかけだった。
「さっきの喧嘩も、私のため……?」
(……当たり前だろ、バカ)
誰が他の奴のために、こんなみっともない殴り合いをするか。
俺は碗を下に置き…
両手で、美依の身体を搔き抱いた。
俺にすがるような姿勢の美依。
その額に、優しく口づけを落として…
そのまま、素直に気持ちを口にする。
「お前を渡すわけにはいかないだろ?光秀がお前をどう思ってるかは知らねぇが」
「……」
「頭に触れられるのも嫌だしな。俺には止める権利は無いって言うが…止めるだろ。好きな女に手を出されそうになったら」
「好きな、女……」
「ああ」
────ずっと、心に想ってた
お前を、お前だけしか…可愛いと思えなかった
たくさん楽しい恋はしてきたけれど、
お前に寄せるのは『恋』じゃない。
もっとえげつなくて、苦しくて、痛い。
それでも、純度は最高潮
混じりけのない…鮮やかな紅(あか)
「────お前の事、愛してる」
「……っ」
やっと口にした想いは、美依に届いたのか。
美依は目を大きく見開いて、言葉を詰まらせた。
俺が素直に言ったんだ。
お前も…素直になれよ、美依。
さっき、俺を受け入れようと目を閉じたんだろ?
そう思っていると、美依は少し身体を離して、先程光秀から受け取った小さな紙包みを俺の目の前に差し出した。
美依の小さな手がそれを開くと…
そこには、黒地に青の糸で刺繍がされた、真新しい眼帯が入っていた。