第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗
「……お前がその気ならやってやろうか」
「ほう…何をする気だ、政宗」
「お前には渡さねぇって言ってるんだよ」
「……面白い」
「ちょっ…政宗?!」
俺が光秀の手を離し、代わりに胸ぐらを掴み上げると、美依から焦ったような声が上がった。
今日は俺の誕生日で、美依がこうして祝ってくれていたのに…
それを邪魔した罪は重い。
そして──……
美依を横から奪おうなんて、もっとあってはならない。
だったら、先に潰すまでだ。
相手が誰であろうと、美依は渡さない。
「俺に殺られる覚悟はあるか、光秀」
「生憎、その覚悟はないな、政宗。殺られるくらいなら殺る、そういうものだろう?」
「ちょっ…光秀さんまで何言ってるんですか!」
「美依…折角俺を祝ってくれてたのに、物騒な事になって悪いな。すぐ済ます」
「政宗、何する気──……」
────バキィッッ!!
美依の言葉を遮り、そのにやにや笑いの顔に一発食らわせると、光秀はそのまま襖に目掛けてぶっ飛んだ。
俺は間髪入れずに、その身体に馬乗りになり…
再度胸ぐらを掴めば、今度は光秀の方から顔に拳が飛んできた。
「きゃっ……!」
瞬間、美依の悲鳴が上がる。
口の中切れたな、これ。
苦い味が口の中に広がり、そう頭の中で冷静に判断するも、途中で止めるなんて真っ平ごめんだ。
俺と光秀は掴みあったまま畳に転がり、なんだかもうもみくちゃになってお互いに殴りかかって…
美依が止めるのも無視して、組んず解れつの大喧嘩に発展してしまった。
「やめて、やめて二人とも!」
「光秀、このやろっ……!」
「ふっ…良い目だ、政宗」
「……っ、うるせぇ!」
がしゃんっっ!!
何かを足で蹴っ飛ばした音がする。
でもそれすら気にも留めず、もつれ合った俺達はお互いを睨み合って、その拳を飛ばして。
まぁ、それだけ騒いでいれば気づかれるわな。
美依か、騒ぎに気づいた女中とかが人を呼んだのか、誰かが部屋に駆け込んできて…
お互い人に羽交い締めにされるようにして、ベリっと引き剥がされた。