第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗
「…光秀、邪魔するな」
「おや…お取り込み中だったようだ」
「絶対わざとだろ、お前」
「み、みみ光秀さん、何でもないです!」
すると美依が焦ったように声を上げ、俺の身体をグイッと押し返した。
そして、急いで身体の下から抜け出し…
真っ赤な顔できちんと正座をしてみせた。
「な、何か御用ですか?」
「まぁな、本当に大丈夫なのか、美依?」
「は、は、はいっ!」
(くそっ…あと一歩だったのに)
俺も体勢を直し、美依の隣に座り込む。
胡座を掻き、膝に頬杖をついて、光秀を睨み上げた。
こんな絶妙な時に入ってきたという事は、多分外から機会を見計らっていたのだ。
まったく、タチの悪い悪戯にしても程がある。
もう少し空気読めって、本当に。
「怖い顔で睨むな、政宗」
「うるせぇ、さっさと用とやらを済ませろ」
「まるで飢えた獣だな、目がぎらついているぞ」
俺が下から鋭い視線を向けているのに、光秀は気にしないといった様子で、くっくっと声を押し殺して笑う。
…本当にぶった斬ってやろうか、コイツ。
すると、光秀は美依の目の前に座り込み。
そのまま懐に手を入れると、小さな紙包みを取り出して、美依に差し出した。
「台所で、これを落とさなかったか?」
「光秀さん、これっ…」
「お前のだろう?」
「そ、そうです!ありがとうございます!」
その紙包みを見た美依は、びっくりしたような声を上げて…
素早くそれを受け取ると、ふにゃりと腑抜けた笑顔を見せた。
なんだ、その可愛い顔。
それを見た光秀も目元を優しく緩め、自然な流れで美依の頭に手が伸びてきたので。
俺はその手を掴むと、さらにぎろっと睨んでみせた。
「触るな。用が済んだなら、さっさと帰れ」
「おお怖い。なら言わせてもらうが…お前にはまだ、俺の手を止める権利はないがな、政宗」
「なんだと?」
「まだ美依はお前のものではない、と言う意味だ」
「……っ」
(コイツ…俺とやり合う気か)
いつも真意の読めないその黄金の瞳は、今日も相変わらず不敵に輝いたままだ。
それでも美依は譲れない。
俺は睨みを利かせたまま、凄むように言葉を紡いだ。