第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗
「……美依」
「な、なに……」
「欲しくて堪りませんって顔してる」
「なっ……!」
「飯の礼に、くれてやってもいいぞ。何が欲しいんだ…?」
敢えて不敵に笑って尋ねると、美依はびっくりしたような顔をして、ふいっと視線を逸らした。
なんだ、その小生意気な反発は。
そーゆー態度取られると…俄然素直に言わせたくなるんだよなぁ。
『政宗が欲しい』と。
その可愛らしい唇が紡ぐのを、聞いてみたい。
俺は肩を抱いた腕を一回離し、改めて美依の両肩に手を置くと、そのままぐんっと力を掛けた。
「きゃっ……!」
小さく悲鳴を上げた美依は、畳に背中を付き、天井を見上げて。
俺がその視線を遮るように、上から見下ろすと…
美依は押し倒されたと解ったのか、俺を見ながら、さらに顔を林檎のように染めた。
「ほら、欲しいもの、言ってみろよ」
「ま、まさむ……」
「なんだ、俺が欲しいのか?」
「……っ!ち、違っ…今のは……!」
「違わない。名前呼んだだけってのは無しな」
「あ……」
片手を肩から離し、その手で顎を軽く掬う。
そのまま親指で、下唇をなぞれば…
美依がこくっと喉を鳴らしたのが解った。
期待してる、その先を。
そう思うだけで、心が芯から熱くなる。
そして──……
身体全体が燃えるように昂り始めた。
「美依……」
名前を呼ぶ声も自然と甘くなり。
俺は当然のように顔を近づけて…
さすれば、美依も自然と目を閉じた。
それを見て、ドクリと心臓が高鳴る。
『行為』の始まりの合図に…
身体中で湧き立つ興奮を覚えた。
……だが。
あと一寸で唇同士が触れ合う、次の瞬間。
────ばたんっ!
(え?)
横の襖が開いた音がして、俺と美依は一斉にそちらを振り向いた。
美依に覆い被さる形で送った視線の先。
そこに見えたのは、薄水色の袴で。
だんだん視線を上に上げていけば、意地悪そうな琥珀色の瞳と白銀の髪が目に入り…
絶妙な瞬間に部屋に入ってきたその男。
俺はそいつを認識するや否や、まるで唸るような低い声で牽制した。