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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗






「政宗、お誕生日おめでとう!」






────美依の用意した祝い膳は
とても素朴で美依らしい膳だった。

お世辞でも華やかとは言えないが…
見た目にも綺麗で味が染みてる煮物や、塩麹で付けた鴨肉の揚げ物や、あっさり味の貝の汁物。

それらは驚くほど美味く、繊細かつ素朴な味付けで、俺は思わず舌鼓を打つ。

俺のためを思って、頑張って作ってくれたのだと。
それを思うと、心がほっくり温まって、腹も心も満たされた心地がした。




「ん、美味いな」

「本当?良かったー!」

「こんな美味いもん、初めて食った」

「え…お、大袈裟だよっ」




素直に褒めてみれば、向かい合って座る美依の頬がぽっと赤く染まった。

照れてるな、また可愛い。
どんな顔だって可愛く見えて、参ってしまう。

俺はパチン…と膳に箸を置くと、ちょっと前のめりになって美依の顔を覗き込んだ。

あーあ…瞳が若干潤んでるな。
そんな顔をされると、さらに攻め込みたい気にさせられるんだが。




「大袈裟じゃねぇ、本当にそうだ」

「あ、ありがとう…」

「…なぁ、そっち側に行っていいか?」




美依が小さく頷いたのを見てから、俺はゆっくり立ち上がり、再度美依の真横に腰を下ろした。

そして、自然な仕草で美依の肩を抱く。
すると美依はビクっと肩を跳ねさせ…
俺を間近で見つめてきた。

大きな黒い瞳が儚げに揺れていて…
それは、ほのかに熱を帯びてるようにも思えて、やけに煽情的にも見えた。




「ま、政宗、食べないの…?」

「勿論食う。でも…礼をさせろ」

「え?」

「俺のためにありがとな、美依」

「……っ」




顔を近づけ、そのまぶたにそっと口づける。
肌が震えたのが解り、身体も途端に固くなった。


(なのに…そんな欲しがってる目、してる)


お前とは恋仲じゃない。
でも…友達でもない、微妙な立ち位置。
どっちかが踏み出せば、そのあやふやな関係は一気に崩れ去る事くらいは、目に見えていた。

だって、俺は美依を好きで。
きっと、美依も俺を好きだから。

なら、何も問題ないだろう?
その関係が崩れ去っても。




俺は──……
お前と、先に進みたい。








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