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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第23章 〖誕生記念〗一花繚乱、瑠璃色の蝶 / 伊達政宗






「政宗、お前、随分上機嫌のようだが」




────安土城の広間

軍議終わりに光秀に声を掛けられた俺は、にやりと不敵な笑みを浮かべながら後ろを振り向いた。



秋風が爽やかな、九月五日。
夏の眩しさは少しだけ薄れ、初秋の匂いが色濃い、長月の晴れの日。

今日は俺の誕生日だ。
毎年この日が来る度に、安土にいる武将達やら家臣達やらが、賑やかに祝ってくれるけど…

今年は少しばかり違う。
それは、あの女が居るからだ。
俺の心を奪った、美依。

その美依から文が届いたのは昨日。
俺に『とびっきりのおもてなし』をしたいからと…

そんな意味深な誘いを受けた。
好きな女から誘われれば、上機嫌にもなるだろ?




(まぁ…敢えてその誘いを受けるんだけどな)




好きな女から誘われ、それだけにしておくほど俺は馬鹿じゃない。

美依を手に入れる絶好の機会だ。
今日こそ、あいつを俺のものにする。

やっとこの想いが報われるのだと思えば…
また輪を描いて上機嫌になるってもんだ。




「まぁな、これからいい事があるからな」

「ほう…いい事」

「なぁ、今日はもう夜の宴まで自由でいいんだろ?」

「ああ、信長様がそう仰っていたからな」

「じゃ、俺はもう行くからな」

「……女か、政宗」




光秀を振り切ろうとすれば、光秀がまた後ろから確信を突く台詞を吐いてきた。

下手に悟られれば、色々厄介だな…
そんな風に思って、光秀を鋭く見つめれば。

光秀はくすっと笑い、顎に手を当てて、俺に探りを入れてくる。




「そう言えば、美依が軍議を欠席して、城の台所に籠っているらしい」

「……そうか、それで?」

「理由が気にならないか、政宗」

「そうだな、特には。話がそれだけなら、もう行くからな」




(……気づいてんな、コイツ)


俺は再度光秀を振り切り、広間を後にした。
歩きながら振り返ってみれば、意味深に笑う光秀が目に映って。

やけに心がざわついたのだけど…
その時はそれ以上は考えず、俺は光秀から視線を外した。

それよりも、この後は美依の部屋だ。

それを考えるだけで…
恋を覚えたての餓鬼のように心が浮ついて、じりじりと焦げるような気がした。







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