第22章 〖誕生記念〗小生意気な彼女 / 真田幸村
「ほら、着いたぞ!」
「ひゃあっ……」
美依の自室に到着し、褥の上に少し乱暴に降ろすと、美依がまた頓狂な声を上げた。
そして、キッと小生意気な目で俺を睨む。
なんだよ、その可愛い態度は。
そう思っていると案の定、美依はまた喧嘩腰の口調で俺に噛み付いてきた。
「けんかちゅーなんだから、ほっといて!」
「ほっとけるかよ、あんな酔った様を見せやがって」
「私が酔ったって…しんげんさま、とかっ、よしもとさんとかっ、かいほーしてくれる、もんっ!」
「呂律も回ってねぇじゃんか、取って食われんのがオチだぞ、本当に可愛くねーな!」
「どーせ、ぶ、ぶすだもんっ……!」
(あ……)
美依の言葉に目を見開く。
『ぶす』って言われた事…相当気にしてるのだ。
それがありありと解って…
俺はバツが悪くなって、思わずそっぽを向いて後ろ頭をかいた。
────謝る、いい機会じゃんか
ごめん、ぶすなんて嘘だ。
本当はすげー可愛いと思ってる。
参っちまうくらいに。
そう告げてしまおう。
そう思って、改めて美依に向き直った。
が、その瞬間。
ふわりっ……
「……っ!」
いきなり美依が俺に抱きついてきた。
その細い腕が俺の首に回り、華奢な身体から温もりが移る。
びっくりしている間もなく、美依はひっくひっくと泣きじゃくってきて…
やがて弱々しく、か細い声が耳の傍で響いてきた。
「ごめっ、幸村…もっと、かわいくなるからっ……」
「え…?」
「幸村が、かわいいって言ってくれるように」
「美依……」
「だから、きらいにならないでっ……」
必死に泣きながら俺に言う美依。
言葉は震えていて……
その細い肩も、小刻みに震えていた。
(……ばーか、何言ってんだ、コイツ)
嫌いになるわけ、ないだろ?
お前を嫌いになるなんて、ありえない。
どうしようもなく惚れまくってんのに。
俺はお前しか、見えないのに。
そっ…とその震える身体に腕を回す。
温かな体温を感じながら…
俺はくすっと苦笑し、優しい口調で自分の心の中を曝け出した。