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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第22章 〖誕生記念〗小生意気な彼女 / 真田幸村






(……っ、冗談じゃねーぞ!)





「あ、幸村……」



俺は佐助の胸ぐらから手を離すと、そのまま立ち上がり、大股で美依と信玄様と義元の元に向かった。
そして……



「ひゃうっ……」



今にも信玄様の膝で寝そうになっている美依を抱え上げる。

美依は変な声を上げたが…
俺が横抱きにすると、潤んだトロンとした瞳で、俺を見上げてきた。




「ゆ、きぃ〜……?」

「うるせー、静かにしろ!」

「うるさいのはお前だぞ、幸村?」

「幸村…そのまま寝かせてあげればいいのに」

「信玄様、後で覚えててくださいよ。義元、お前もだ!」





俺は二人を一回睨むと、美依を抱えたまま広間を出た。

後ろからなんか声が掛かったが、それを無視して宴を抜け出す。
こんな可愛い状態の美依を、男共の中に居させたくなかった。

廊下に出てみると、夏とは言え夜だから、少しひんやりとした空気が頬を撫でる。

ずかずかと急ぎ足で部屋に向かっていると…
美依が下から見上げながら、何やら抗議の声を上げてきた。




「けんかちゅーだからっ、はなしてっ…!」

「うるせー、大人しくしてろ!」

「いやーいやー!ゆきなんかしらないー!」

「俺も酔っ払いの言う事なんか聞かねぇ!」




相変わらずの言い合いを、ぎゃーぎゃーとしながら足早に部屋へと向かう。

下から文句を言ってくる美依は、ほのかに肌を赤く染め、吐息は甘く、瞳は涙を孕んで…



(くっそ、めちゃくちゃ可愛いじゃねーか)



やっぱりあんな風に酒を飲ますべきではなかった。
こんな状態で、信玄様と義元の相手をしていたなんて考えるだけで、苛立って仕方ない。

しかも……
信玄様の膝を借りて眠ろうとしていた。
あんな風にふわふわと可愛い状態で…




────その感情は、何を指すのか
俺は即座に頭の中で理解をしていた




美依を他の男に見せたくない。
触れられたくない、出来るならば…
俺の前だけで、可愛い姿は晒して欲しい。

そんな、自分勝手な理由。
みっともなく、自己中心的な考え。
それはもう、この心と頭に溢れ返って…



コイツを愛しく想う気持ちと混じり、
俺の心を真紅に染め上げる。










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