第22章 〖誕生記念〗小生意気な彼女 / 真田幸村
「よくそう飽きもせず喧嘩できるな、二人とも」
「うるせー、呆れてんだろ」
「むしろ感心する」
「あのな…って、ん?」
俺が佐助と話していると、いつの間にか美依の側には信玄様と義元が来ていて、三人で仲良く談笑し始めていた。
お互いに酒を注ぎ合い、とても近い距離で会話をしている。
何がそんなにおかしいのか…
美依は会話をするたびに楽しそうに笑い声を上げるのが解った。
(随分、楽しそうだな)
何を話しているのかまでは聞こえない。
さっきのように半泣きで酒を煽っているよりは、その方が全然良いかもしれないけど…
でも。
随分、近すぎないか、あれ。
「美依…すげー笑ってんな」
「そうだね」
「あっ…信玄様、美依の頰に触れんな!」
「…幸村、心配なら君も行けばいいと思う」
「ばっ…そんなんじゃねー!」
佐助に相変わらずの無表情で言われ、俺は思わず声を荒げた。
気に…ならないわけがない。
だって、やたら距離は近いし。
美依はなんか可愛い笑顔をみせてるし。
おまけに酒は入ってるし…
これが気にせずにいられるか。
何もないとは思っても…
それでも、俺以外にあんな無防備な笑顔を向けるのは、はっきり言って面白くない。
でも、喧嘩中。
気になったって、声なんかかけられない。
俺は佐助の胸ぐらをぐいっと掴むと、まるで凄むように佐助に詰め寄った。
「気になんかしてねぇからな、違うからな」
「でも、幸村」
「んだよ」
「あれはさすがにまずいと思う」
佐助が凄まれているのなんか全然気にしていないように、ちょいちょいと三人の方を指差した。
それに釣られ、俺は改めて美依達の方を見る。
そこで目に映ったのは…
「可愛いなぁ、このまま連れ去ってしまいたいな」
「本当に、無防備で可愛いね」
信玄様の膝に引っ付き、今にも寝そうになっている美依の姿。
ふわふわと気怠げに微睡み…
さっきまで笑い声を上げていた姿とは一変。
まるで閨での姿を想像させるような…無防備で愛らしい、そんな『女』の一面が垣間見えた。
そしてそれを見下ろす二人も。
そんな様子の美依を見守ると言うより…
可愛らしい女を狙う『男』の顔付きにみえた。