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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第21章 〖誕生記念〗愛され兎と真紅の『かれし』/ 織田信長






────加速する、想い




心のベクトルは貴方にだけ向いて。
それに答えて欲しくて、必死に泣き叫ぶ。
貴方を心に描きながら…
そこには無い存在に、悲しいほど想いを馳せる。

私は泣いて、泣いて、泣き疲れて…

いつしか子どものように眠ってしまった。
『信長様、信長様』とうわ言のように繰り返しては…

返事がない事に、また寂しさを覚えて涙が流れたのだった。















*****















『美依……』




……ああ、まだ私、夢を見てるんだ
あの人が名前を呼んだ気がしたから

ここには居ないのに、帰って来てないのに

こんなにリアルに耳に届くなんて
私はどれだけあの人が好きなんだろう




───………信長様




ごめんなさい、ごめんなさい
早く謝りたいの、まだ帰って来ないの?

もう辛いよ、待てないよ
貴方が恋しくて、恋しくて
胸が潰れそうなくらい…苦しい






「……っのぶ、さまぁ……」

「ただいま、美依」






(え………?)



繰り返しまた名前を呼ぶと、ハッキリと答えが帰ってきたので、私はゆっくりと目を開いた。

そのままぼんやりしながら、何度か瞬きをする。
そのまま視線を動かせば…
私を上から見下ろす、優しげな紅い瞳と視線が絡んだ。




「……っ!」

「貴様、泣きながら寝ていたのか?頬に痕がついているぞ」

「あ……」




頬を指の背で優しく撫でられ、一気に意識が覚醒する。
私の身体の横に手を付き、覆い被さるような姿勢で涙を拭う、その人は…

私がひたすらに待ち焦がれた、愛しい人。
その人の姿に、相違なかった。




「信長、様っ……」

「今帰った、美依」

「お、おかえり、なさっ……」




びっくりしすぎて、上手く言葉が出てこない。
その間にも、指は私の頬を優しく撫でる。
まるで愛おしむかのように、壊れ物を扱うかのように。

その淡い触れ方に、またじんわりと涙が滲み出した。



(やっと、帰ってきてくれた……)



謝らなくてはいけないのに。
言わなければいけない事はたくさんあるのに…

でも、それよりも早く温もりを感じたくて。
私は腕にある二着の夜着を放り出し、そのまま腕を伸ばして信長様の首に抱きついた。






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