第20章 〖誕生記念〗暁に咲く夢見草 / 豊臣秀吉
「ほんっとに、お前は……」
「え…?」
「俺の台詞を取るな。それは…俺がお前に言う言葉だろ?本当に、お前には敵わない。それに、そんな可愛い顔でそう言われたら…俺……」
「あっ」
今度は片腕で包まれたまま、ぐいっと顎を乱暴に掬われる。
そして──……
そのまま唇同士が重なった。
その口づけは性急に甘く深くなっていき、全てを奪われるように貪られていく。
「んっ、んぅ…ぁっ……」
微かに開いた隙間からは、吐息が漏れて。
絡み合う水音が耳に届き、一気に身体が体温を上げた。
強く腰を引かれ、顎を捕えられ、逃げることも出来ない。
それでも誘う舌に必死に応え、自分からも秀吉さんを抱き寄せた。
次第に体制は傾いてきて…
トサッと草むらに背中が付くと、上から熱を孕んだ瞳が見下ろしていた。
「俺、我慢出来なくなる」
「秀吉、さ、ん……」
「お前と十日も離れていて、触れたいのに傍に居なくて、だから、もう…すぐに欲しくなっちまう」
「……っ」
「…お前を抱きたい、美依」
「んっ……」
顔が降りてきて、そのまま首筋を甘噛みされる。
手は身体の輪郭を撫で、優しく優しく這っていて…
その淡い触れ方に、熱を上げた身体がさらに疼いた。
ここ、外なのに…
しかも明るくなってしまったのに。
恥ずかしい事するなんて、そんなの…
────でも、どうしようもない
私も秀吉さんが欲しい。
離れていた間、ずっと恋しかった。
ずっとずっと、触れたかった。
ア ナ タ ガ 欲 シ イ
「……いいよ」
私はたくましい首に腕を回し、そっと引き寄せ囁いた。
朝陽に照らされて…
何もかもはっきりと見えてしまう。
隠すなんて、出来やしない。
隠しておけない。
秀吉さんを、欲しい気持ち。
「今すぐ…抱いて」
「美依……」
「誰も、見てないよ…ね?」
「ああ…俺達だけだ」
そして、また深く唇が重なり合った。
恥ずかしいね、こんなの。
桜が見ているよ、私達を。
でも、見守ってくれているのかな。
暁に染まる、淡い紅色の花が。
────きっと呆れたように、微笑んで