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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第20章 〖誕生記念〗暁に咲く夢見草 / 豊臣秀吉






「こーら、なんで泣くんだ?」




それに気づいた秀吉さんが、苦笑しながら唇で涙を拭う。

その柔らかな感触も…
焦がれすぎて嬉しくて、おかしくなってしまいそうだ。




「だってっ…帰ってくるの待ってたんだもん」

「うん、そうだよな。ごめん、遅くなって」

「あ、会いたかったよぉ……」

「俺もだ、美依」




すると、その温もりが今度は唇に触れた。
濡れた舌先が唇を割り、やんわりと絡め取られる。

誘われるがまま、必死に応えれば…

身体に回った腕で腰を強く抱き寄せられ、私は秀吉さんの胸元にしがみついた。



「んっ…ぁっ…」



自然と唇から甘い息が漏れる。

厚い胸も、力強い腕も。
私が十日間、ずっと求めていたものだった。
寂しかった。
本当に本当に…秀吉さんに触れたかったんだ。





ちゅっ……





やがて、甘い水音がして唇が離れると。
秀吉さんは私を腕に囲ったまま、優しく目を細めながら口を開いた。




「なぁ、まだ夜明け前なんだが…これからちょっと付き合ってくれないか」

「え……?」

「お前に見せたいものがある。今から馬で向かえば…丁度いい時間になるから。もちろん、眠いなら褥に行け」




秀吉さんにそう言われ、改めて状況を確認する。
部屋の中はまだ薄暗く、まだ夜は明けていないようだった。

待ちながら、机に突っ伏したまま眠ってしまったんだと。

そう思ったら、少し恥ずかしい。
でも、秀吉さんが私に見せたいものとはなんだろう?

秀吉さんの顔を見たことで眠気も飛んでしまった私は、首を横に振った。




「大丈夫、眠くないよ。それ見に行こうよ」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫だよ!見せたいものって、なに?」

「それはその場所についてからのお楽しみだ」




秀吉さんが私の額に優しく口づけ、手を取りゆっくり立たせる。

そのまま私達は御殿を出て…
ひとつの馬で、夜明け前の暗い道を駆け出した。

背中から回った秀吉さんの腕が温かくて…

その温もりに身を委ねるだけで、すごくすごく安心して、私は今まで離れていた寂しさが癒される心地がしたんだ。















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