第19章 〖誕生記念〗焦がれし天色、愛しい君へ《後編》/ 徳川家康
「家康、待って…!」
「え……」
「家康、今は怪我してるでしょ?だから、だめだよっ…」
「怪我くらい平気。甘やかしたいんだけど」
「だめっ」
俺の目を見ながら、きっぱり言い放つ美依。
だめって…そんな。
今我慢させられるほうが、怪我なんかよりもっと打撃食らうんだが…
(口がへの字になってる…だめだ、これ)
どうやら本気で怪我を心配しているらしい。
だめって言っているのに続けたら、あの蒼生と同類である。
俺は『解ったよ』と言って、美依から身体を起こした。
そして美依の身体も起こして、膝の上に座らせながら、小さくため息をつく。
「仕方ないから、今は引いてあげる」
「怪我が治ったら…ね?」
「誕生日の宴の後なら…いいよね」
「え、三日後じゃ治らないでしょ?!」
「それ以上は我慢出来ない、無理」
美依の額にコツンと自分の額を合わせ、顔を覗き込んだ。
美依はまだ不満そうだったが…
これでも妥協しているのだ、それは少し解ってほしいな。
「解った、でも無理はダメだよ?」
「うん、約束する」
「絶対ね?」
「解ったよ。でも、今はとりあえず…」
「???」
指で美依の唇をふにっと押す。
そのしっとり濡れた柔らかい感触は…
俺を誘惑し、もっともっと溺れさせていくんだ。
「もっと、口づけ…しよ?」
触れ合った唇から温もりが移る。
契り合えなかったのは残念だけど…
想いが通じたのだから、それだけでも良いと思う。
そうしなきゃ口づけも出来なかったし。
抱き締めることも叶わなかったから。
もう、あんたは俺のものだよ?
誰にも渡さない、誰にも触れさせない。
俺だけの…愛しいお姫様だから。
俺達は時間も忘れ、夢中で口づけ合いながら、お互いの温もりに溶けていった。
もう二度と離れないようにと。
抱き締める腕には力がこもって、
二人だけの甘い時間に酔いしれていったのだった。
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