第19章 〖誕生記念〗焦がれし天色、愛しい君へ《後編》/ 徳川家康
「────…………っ!」
腕の中の美依が、小さく息を飲んだのが解った。
顔が火照る、美依の表情が気になるけど。
見れない、恥ずかしくて見れない。
きっと、今の俺は真っ赤になってる。
美依は…どうなのかな。
それを確かめるのすら、今の俺には出来ない。
でも、抱き合って訪れる沈黙は、どうしても長くて耐えられなくて…
俺は美依の背中を撫でながら、少し催促するように問いかける。
「美依…なんとか言って」
「い、え、やす…」
「……!」
その時だった。
美依がゆっくり顔を上げたかと思ったら、近づいてきて。
────ふわりっ
その桜色の唇が、俺の唇に柔く触れた。
それは一瞬の事だったのに…
僅かな時間だけ触れた唇は、じんじんと痺れて熱を帯び出す。
「これが…私の気持ち」
「美依……」
「私、あの時家康を待ってた。きっと助けに来てくれるって…家康の言う事聞かずに勝手に行って、それこそ自分勝手だけど、でも、私…!」
「っ…」
必死に見上げてくる美依。
兎のように真っ赤な目をして。
濡れた眼差しは、とても煽情的で。
そして紡がれた言葉は、俺を今以上に虜にさせた。
「私、家康のこと、すきっ……!」
(……っああもう、ほんとに)
男を煽らないでよ、美依。
そんな可愛い顔で、
すき、とか言われた日には。
色々麻痺して、
理性も飛んで。
今すぐ全てを奪いたいとか、
男はそうなるんだよ?
「んっ……!」
案の定、俺は美依を押し倒して。
組み敷きながら、その唇を俺から塞いだ。
今度は触れ合うだけじゃない。
唇を濡らして、薄く開いた隙間から舌をねじ込んで。
美依の全てを奪うように、絡め取っていく。
「んっ…あ…」
「はぁ…美依っ…」
名前を呼んで、再度塞いで。
濡れた甘い水音が、儚く響き…
どう考えてもこのまま身体を重ねるんだろうなと。
俺はそのつもりだったのに…
美依は俺の胸元をぐいっと押し返し、それに気づいて唇を離すと、少し息を荒げながら俺に言ってきた。