第19章 〖誕生記念〗焦がれし天色、愛しい君へ《後編》/ 徳川家康
「ねぇ、美依」
「うん…?」
「どうして、あの時俺の名前を呼んだの?」
「え……?」
「あんたを助けてくれる男なら、俺以外にもいるでしょ?なのに、助けて家康って…言ってたから」
すると、美依は手当てする手を止め、頬を染めて小さく俯いた。
……なんだ、この反応。
赤くなられると、こっちまで照れるんだけど。
お互いに顔を赤くさせながら、しばし沈黙の時間が流れる。
そして、それを破ったのは美依だった。
小さな声で、恥ずかしそうに…
たどたどしく、言葉を紡ぐ。
「い、家康、こそ……」
「ん?」
「なんでこんな怪我してまで助けてくれたの?どうして…助けに来てくれたの?」
「……」
反対に問われ、逆に俺が俯いた。
しっかりしろ、俺。
今こそ、気持ちを伝える絶好の機会だ。
────美依を俺のものにしたくて
ずっとずっと、言いたくて
でも、言えなくて……
心の中で温めてきた気持ち、言葉
それはきっと、俺の中にある
ひねくれていない、素直な想い
「あっ……」
俺が美依の肩を掴み、胸に引き寄せると、美依は驚いたように声を上げた。
そのまま胸にぎゅっと抱きすくめる。
俺にもたれ掛かるような体制の美依は、抱き締めた途端に、身体の温度を上げた。
(可愛い…本当に、参る)
素直なあんたは、
俺を素直にさせるの上手いよ。
何かの魔法に掛かったみたいに。
心の声が、喉を通り
美依に伝えるために零れていく。
「……あんたを守るのは俺の役目」
「え……」
「好きな子は、自分の手で守らないと」
「す…き、な…子……?」
「今だけ素直になってあげるから…ちゃんと聞いてて」
目を見てなんて、とても言えない。
だから、囁く言葉に耳を傾けて?
俺の精一杯の言葉。
「俺、俺は──……」
震える唇から紡げ
想いの言ノ葉を
芽吹け、俺の淡紅の花
「美依のこと、すき、だよ……」