第19章 〖誕生記念〗焦がれし天色、愛しい君へ《後編》/ 徳川家康
────心がじわりと熱を帯びる
素直に背中に乗ってきた美依を背負って、帰途につきながら…
ほんの少し、俺も素直になろうと思った。
それは、こんな事が起きたせいもあるけど。
やっぱり、思うんだ。
絶対、誰にも渡せない。
────美依は俺のだから
俺に助けを求めてたこと。
すごくすごく嬉しいと思った。
自惚れでも、なんでも…
ほんの少しの可能性を信じたい。
俺に『助けて』と言っていた美依。
秀吉さんでも、政宗さんでもなく、俺に。
それって、つまり…そーゆー事なのか?
美依の温もりを感じながら…
俺は雪降る空を見上げ、一つ息を吐いた。
もうすぐ俺の誕生日。
欲しいものくらい…素直に欲しいと言いたいと。
それを言葉にする勇気を。
今こそ持つんだと…そう思った。
*****
城の美依の部屋に着いて早々、『手当てするからじっとしていて!』と美依に捕まってしまい。
俺は美依に大人しく手当てされながら、頭の中でどう素直になろうかと考えを巡らせていた。
(簡単に素直になれたら、こんなに悩まないよな)
美依は着物は切られていたが、肌などには一切傷はなかったようで、それは少し安心したのだけど。
まったく、着物を切って女を怯えさせて、なおかつ襲うなんて…
本当にあいつは下衆だったな、と改めて思う。
「痛くない……?」
「あんたの方が痛そうな顔してどうするの。そこまで痛くないから大丈夫」
「でも、手も結構傷になってるね……」
「まぁ殴り合いになったし、はさみとは言え刃物だからね」
腕に包帯を巻き、殴られた部分に薬を塗り。
そして、切れた手のひらにも包帯を巻きながら、美依が俺の様子を伺ってくる。
こんなに痛そうな顔をされてしまっては、なんか申し訳ないない気分になるな、反対に。
手当てする手元を見ながら…
先程から思っていた『ほんの少しの可能性』を信じ、俺は勇気を振り絞って美依に問いかけた。