第17章 【戦国Xmas】明智光秀編
「ただ少しすれ違っただけだ」
「すれ違った?」
「くりすます、の事でだな……」
俺は秀吉と三成に、『くりすます』に密かに美依を喜ばす計画を立てていた事を、正直に暴露した。
それで秘密に動いていたら、変に不安にさせてしまったのだと。
すると、話を聞いた秀吉は溜め息をつき…
呆れたように、俺を見ながら言葉を発した。
「お前の性分が祟ったな。普段から秘密が多い上に、それを上手く誤魔化してやり過ごすとこがあるだろ、お前。美依が不安になるのも解るぞ」
「だが今回ばかりは仕方あるまい。美依に知られたら、全て台無しになるからな」
「その計画、実行されるのですか?確か今夜ですよね、くりすますいぶと言うのは」
「美依がへそを曲げているからな、難しいかもしれん」
小さく溜め息をついて、腕を組む。
涙をいっぱい溜めて走り去った、美依の後ろ姿がありありと思い出され…
思わずちくりと、心が傷んだ。
あんな顔をさせたかった訳では無い。
そう…喜ばせてやろうとしただけだ。
すると、その時。
三成が、何か思い出したかのように『あっ』と声を上げると。
途端ににこにこして、人差し指をぴっと立てた。
「光秀様、もしかしたら美依様と仲直りする、きっかけを作れるかもしれません!」
「どーゆー意味だ?」
「実はですね、今夜……」
そう言って、三成は今夜起こる『ある現象』について、詳しく説明をしてくれた。
それを聞き、俺は目を見開く。
美依がまさに好きそうな事だと…
それは確かに、美依を呼び出すきっかけにはなる。
「成程な、確かにいい案だ」
「光秀様、ぜひ美依様を誘ってみては」
「ああ、そうしよう。三成、恩に着る」
「……お前が素直に礼を言うなんて、少し気持ち悪いな」
秀吉になんと言われようが、背に腹は変えられない。
とにかく美依が喜べばいいのだ。
俺はそう思い、早速今夜の準備をするために御殿へ急いだ。
美依の喜んだ顔を見るため。
泣かせてしまった詫びに『くりすます』の奇跡を。
奇跡なんて普段は信じないが…
この日ばかりはそれを頼ってみようと思えたあたり、結局小娘には甘いのだと苦笑を覚えた。